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NO.27_TD-HOUSEができるまで

Vol.07:改正基準法

(2007/09/27)

改正基準法について(2007/09/28)


今回の計画では、2007/6/20施行された、改正基準法に従って、確認申請を行う必要があります。

この改正基準法は、構造計算偽造事件を受けて、再発防止を趣旨として施行されたものですが、実際には大変問題が多い法改正です。

このTD-HOUSEは、RC構造4階建てで、確認申請時に2重チェック(通称ピアチェック)を受けなければなりません。また、確認申請の書類作成の多さは、以前の何倍も多く、大変な作業です。

確認申請/2世帯住宅/間口が狭い/RC壁式構造/建て替え/外断熱/TD-HOUSE
今回の提出書類。以前より格段に増えています。

確認申請/2世帯住宅/間口が狭い/RC壁式構造/建て替え/外断熱/TD-HOUSE
以前の同等な建物(実際には正副2部必要)



問題はいろいろありますが、まとめてみると以下の通りです。

1,法の内容を国民にきちんと周知していない。
2,法だけ決めて、運用規定がなく、審査が出来ないので、認可が下りない。
3,設計変更すると再審査なので現実的には、施主の意向を設計に取り入れられない。
4,新しい法に対応した、構造設計の認定ソフトがない現実。
5,ピアチェック(2重チェック)で、本当に偽造は防げるのか。
などなど。


私はこの中で一番問題点は、設計変更をするには、基本的に再審査が必要という点を一番問題視しています。

法改正以前は、大体小さな変更は”軽微な変更”といことで、簡単な届けを出すことで解決できました。
今回の改正では、設計変更をする場合に、再審査が必要であり、その審査期間は、工事をストップする必要があるので、現実的には、変更が不可能ということに等しくなってしまったのです。

ところで私たち設計の専門家でも、設計の時点で、完成した建建築をどれだけ把握しているのかを、数字で表すのは少し強引ですが、あえてたとえると、大体90%位だと感じています。
残りの10%程度は、現場で気づいたり、発見したりしながら解決することが多いものです。
また、設計とは、はじめて試みるディテールや素材も多く、設計を煮詰めるために現場は大切なものつくりのプロセスなのです。

実際の工事には入ってから、より良いアイデアが出ることは良くある話ですし、現場で気づくこと、経験ある職人と相談してみて思いつくアイデアなど、現場での検討は必要不可欠です。

また、建て主の立場では、設計の時点で内容を全て把握することは不可能に近いと思います。
図面や模型やパースを駆使して説明しても、先ほどの数字で強引に表すと、30?50%程度がせいぜいでしょう。

ですから、建て主にとっても、納得のいく家づくりを行うチャンスを、法によって取り上げられているということになっています。

今回の改正で、こういったプロセスを踏むことが実際には不可能ということは、ものつくりの現場を否定するというに等しい。国は一体何を考えているのでしょう。

こんながんじがらめの法律改正で、レアケースに等しいような偽造事件を減らすことが出来たとしても、失うものがあまりに多いことでしょう。そもそもこれで偽造事件が減らせるか疑問ですが。

日本の職人のレベルは、世界的にも非常に高度なのですが、現場に職人気質が消え、活気が衰退していくような予感がします。

現場は、建築家と施主と職人で、最終的に詰めていくプロセスです。



NA-HOUSEの現場


AK-HOUSEの現場


現在、TD-HOUSEは、確認申請を審査機関に、提出していますが、認可される予定が全く分からないと聞いています。
いろんな面で、本当に困ったものです。