01.外観デザインはなぜ大切か
今回のTD邸は、竣工時の見学会にお邪魔していたので実は2回目の訪問でした。見学会の案内を見たときに、「大戸さんにしては珍しい」と思ったのが、ファサードのアーチ形庇です。
2階ベランダの床と側壁もそのまま延びているので、庇というより、建物の床と壁と屋根が飛び出しているような印象です。大戸さんのデザインは概して控えめなものが多いので、ちょっと意外に思えたのです。
今回、このアーチについて大戸さんに聞いたところ「思いつきです」と苦笑していましたが、この「思いつき」はTDさんご家族にも大好評で、コスト調整の際にもここだけはいじらなかったといいますから、設計者にも建て主にも思い入れの強いものになっているようです。
ファサードの表情が大切なのは、街並みとの関係もありますが、なにより「我が家」としてのアイデンティティが得られることが大きいと思います。
TDさんの奥さんが、ママ友たちとの付き合いのなかで、「子どもや私とは初対面の人でも、家の場所を伝えると『あ?、あの家!』って言われるんです」と嬉しそうに語っていたのは、とても印象的でした。
自分たちはもちろんですが、周囲の人たちからも(もちろん、いい意味で)「特別なもの」として認識されるのは嬉しいものです。
それは、住む人たちにとっての誇りとなり、家への愛着へとつながります。
ファサードのデザインが、住む人たちに愛され、近隣に愛されるものであれば、その家はきっと長くみんなから大切にされることになるでしょう。
→(NEXT)
|