私たちの取り組み
 オンライン設計室
 住宅・建築事例集
 住んでみて
  不定期日記
  PROFILE
  各プロジェクトの家づくりのプロセス、”出会い?設計?工事”の記録集です。
住宅が、どのようにつくられるか。 --- How is a house mede?
 

「3,4,5階建ての住宅」 「間口の狭い住宅・敷地」 「狭小地・変形地」 「鉄骨造の家」 「木造の家」
「RC造の家」 「2,3世帯住宅」 「老後の家・楽のすみか」 「省エネ住宅」 「リフォーム・リノベーション」

Vol.16:メーリングリストが苦痛になってきた!

4階建RC住宅 / パッシブソーラーハウス
NO.05_ON-HOUSEができるまで
(1999/10)

[1999/10]メーリングリストが苦痛に感じてきた


ONさんのご要望で、設計の早い時点からメーリングリストを使って、設計関
係者全員で情報を共有しながら、設計を進めて来たのは、とても評価できる画
期的な設計の進め方であると感じていました。
しかし、工事段階に入り、メーリングリストの使われ方が少し、変化している
ように感じ始めてきました。それは、クライアントのONさんが工事のチェッ
ク機構としてメーリングリストを使いはじめてきたからです。ONさんは故意
にチェック機構つまり管理機構として使ったわけではありません。工事の段階
ではクライアントが、工事の分からないことを聞いて来るのは当然の事だと思
います。もちろんこちらもお答えするのがいやだと言うわけでなありません。
私自身の考え方は、工事の段階でもよりよい方法が見つかれば、変更を重ねて
行きたいと常に考えています。だから、工事の段階でも、常に前向きの姿勢つ
まり、ものを作っていく姿勢を崩したくないのです。
一方、クライアントのONさんは、設計は終わっており、後はそのま建ち上げ
れば良いとお考えでしたので、管理の視点から工事をご覧になっていたわけで
す。常に、管理されていると感じた瞬間、メーリングリストに参加することは
とても苦痛に感じてきました。
その視点の微妙なズレが、表面化したのであると思っています。
今回は、この辺の点についてのメールのやり取りを公開します。



[1999/10/14]メーリングリストが苦痛です。(大戸からONさんへのメール)

少しON邸の家づくりについて、感じることがあるのでコメントさせて下さい。

これから、やっと本格的な工事に入ります。そこで、まだ方向転換できるだけ
の猶予はあると思いますので、かなり失礼なことも含むと思いますが、あえて
正直に、感想を書いてみます。

正直申しまして、ここまでのON邸の家づくりがあまり面白くないのです。
メーリングリストも、初めは使い方によっては可能性を感じましたが、正直申
しまして、今はむしろ面倒なものと感じています。

その原因は、家づくりの本質、つまりクライアントと建築家が協同して、新し
い住まい方を発見したり、空間を作り出したりということがほとんどなく、設
備のことや、材料の話に終始したり、データーがいくつだとかという話に終始
し、家づくりのもっとも面白いと思われる部分の、話し合いがほとんどないか
らです。昨年のコンペ案から何が、変化し、生まれ、成長したでしょうか。私
は、正直言いまして、昨年から全く住まいの質的変化がないと感じています。

そういった方向付けをするのが、私たち建築家の仕事かもしれませんが、それ
に掛けられる時間を、問題解決のために時間とエネルギーを費やしてしまいま
した。数百通のメールは何だったのか疑問にも感じています。時間とエネルギ
ーは普段のプロジェクトの2倍以上はかけていますが・・・


メーリングリストも、施工者を含めてそう言った、ものを作るための創造的な
ことに使うのであれば、とても可能性があると思います。しかしチェック機構
として使うのであれば、とても面倒なものと感じられてしまうのが正直なとこ
ろです。もちろん、手抜きをしたりするわけではないのですが。


これは、私は情報化時代の盲点だと感じています。つまり情報が容易に手に入
るが故に、解決すべき問題も増えてしまうこと。これまでのON邸の家づくり
は、多分に問題解決に終始してきた感があります。しかし本来家づくりは、前
述のように新しい空間や、住まい方を発見する創造型であるはずです。問題解
決型の家づくりは、問題の種類にもよりますが、ほとんどつまらない。(ない
がしろにするわけではありませんが。)


Y子さんのご発言からは、確かに子供さんとのご関係を大切にするなどと言
ったことから、階を逆転するなどと言った発想は、前向きなお考えであると思
います。ただ全体を通して、デザインのこと、リビングの空間のこと、美しさ
のことなどはほとんど話題にもなりませんね。私と、二宮さんが心を込めて、
取り組んでいるのは、そう言った家づくりのことなのです。


まだ時間は有りますので、少しこの辺から視点を変えて、ON邸をご覧になり
ませんか?
もう少し、住まいの質のこと、美しさのこと、空間のことなどを話し合いませ
んか?
今のままだと、まるで無機的な機械を作っているような感じです。
ONさんの視線の先に、私たちがエネルギーを賭けている住まいを見て欲しい。

以上は、本当に正直な私の気持ちです。
私たちは、建築設計を職業とするプロです。ですから、無限の時間と、エネル
ギーを賭けるわけにはいきません。プロですから与えられた時間と予算の中で
最善を尽くすことが使命です。ですから、あれもこれもといったことは不可能
です。このままでは、今後のプロセスに危機感を感じています。

もしよろしければ、ご意見をお聞かせ下さい。もし失礼があればお許し下さい。

以上よろしくお願い致します。

  *****  建築計画網・大系舎 大戸浩  *****
  *****  http://www.campus.ne.jp/~ooto/taikeisha.html  *****



[1999/10/14]Y子さんからのお返事

こんばんは、ONY子です。

私の思っていることです。正直に書きますので、失礼があってもお許しくださ
い。

一般的なイメージとして、設計家が建てる家は、どこかに特徴があり、一風変
わった家といったイメージがあります。また、設計家のかたは、自分たちが任
された家に対しては、与えられた土地を、いかに有効に使って、そこに住む人
たちを快適に過ごしてもらうかと一番に考え、さらに自分の個性を少し出して
みたりすると思います。

主人は、何事に対してもとことんこだわるほうで、自分が納得のいくまで調べ
る性格です。自分が調べ、使ってみたい材料などが、専門的に見た場合どうな
のかということ、また、実際に自分たちの家で使えるのか、といった点など、
設計家の意見を聞きながら取り入れていこうと考えていたようです。(と、私
は感じていました。)

今回、建て主として、設計家にお願いすることとなり、
・設計家の方へお支払いするお金
・実際に家そのものにかかるお金
これら全てが、自分たちが日々働いて稼いだものから支払われるのだというこ
とをしみじみと感じました。となると、やはり材料にもこだわってしまうし、
それを専門家の方に調べていただきたくなってきてしまうのではないでしょう
か?それに、建築予算に制限がある以上、少しでも安く同じ品質の材料を手に
入れたいと考えるのが建て主側の考えなのではないでしょうか?

つまり、設計家である大戸さん、ニノミヤさんが私たちに与えたかった情報と
私たちが欲しかった情報とがずれてしまっていたということですよね。

これから先、方向転換するとしても、どうしていけばよいのでしょうか?大戸
さんからのメールを読みますと、私たちに、これ以上細かいことに口をはさむ
なと言われているように感じてしまうのですが???

> その原因は、家づくりの本質、つまりクライアントと建築家が協同して、新し
> い住まい方を発見したり、空間を作り出したりということがほとんどなく、設
> 備のことや、材料の話に終始したり、データーがいくつだとかという話に終始
> し、家づくりのもっとも面白いと思われる部分の、話し合いがほとんどないか
> らです。昨年のコンペ案から何が、変化し、生まれ、成長したでしょうか。私
> は、正直言いまして、昨年から全く住まいの質的変化がないと感じています。


正直申し上げますと、私は大戸さんが書かれている「家づくりの本質、つまり
クライアントと建築家が協同して、新しい住まい方を発見したり、空間を作り
出したりということ」に関しては、最初の段階で終了して、次の段階として設
備のこと、材料のこと、データのことに移っていったものだと理解していまし
た。ですので、間取りにこだわっていた私は、もう口出しする段階は過ぎてし
まったものと思っていました。
普通の家作りでは、大戸さんがおっしゃっているようなことが最終段階まで続
いていくのですか?もし、そうだとしたら、「ON邸の家作り」はきっとおも
しろくないでしょうね。でも、そういったクライアントがいてもよいのではな
いでしょうか?設計家のかたは、一生のうちに何件、何十件もの家建築に携わ
るでしょうが、私たちが家を建てるのは、一生のうちで1度(良くても2度)な
のですから?!クライアント(主人)は、設備のこと、材料のこと、データの
ことなどの話し合いに満足していると思いますよ。なーんて思ったりもしてし
まいます。(正直なところ…)
ただ、大戸さんたちも少しでも楽しくなるよう、「住まいの質的変化」につい
て、提案してくださればと思います。こちら側が見落としていたこと、思い込
みすぎていたことなどが発見できたりすることもあると思います。また、私が
口をはさめるような話題も出てくるかもしれませんね(笑い)。

>ただ全体を通して、デザインのこと、リビングの空間のこと、美しさのこと
>などはほとんど話題にもなりませんね。

お金に余裕があれば、あれこれ色々とご相談していきたいと思っていたのです
が…(と私は思っていました。)

あと数ヶ月で自分の家ができるかと思うと、ワクワク楽しみです。
きっと、また主人も無理なお願いや質問などするかと思いますが、よろしくお願
いします。

子供がそばで騒いでいるので、読み直していません。すみません。

クライアントと真剣な打ち合わせ


[1999/10/15](大戸からY子さんへ)

こんにちは、Y子さん。建築計画網・大系舎の大戸です。

早速のご返事、ありがとう御座います。

 >私の思っていることです。正直に書きますので、失礼があってもお許しくださ
 >い。
★全然。すごくうれしいです。



 >一般的なイメージとして、設計家が建てる家は、どこかに特徴があり、一風変
 >わった家といったイメージがあります。また、設計家のかたは、自分たちが任
 >された家に対しては、与えられた土地を、いかに有効に使って、そこに住む人
 >たちを快適に過ごしてもらうかと一番に考え、さらに自分の個性を少し出して
 >みたりすると思います。
★私の感じでは、半分同意出ますが、半分はそうかな?という感じです。
特に一風変わったというのは、あくまで建築家が独走してデザインして場合で、
住宅設計では、建築家はクライアントと一緒に考えながらという意識を持ってい
ますので、それは誤解でもあると思います。



 >主人は、何事に対してもとことんこだわるほうで、自分が納得のいくまで調べ
 >る性格です。自分が調べ、使ってみたい材料などが、専門的に見た場合どうな
 >のかということ、また、実際に自分たちの家で使えるのか、といった点など、
 >設計家の意見を聞きながら取り入れていこうと考えていたようです。(と、私
 >は感じていました。)
★Y子さんのおっしゃることは全くその通りです。
ONさんのこだわりは自体は、もちろん全く悪いことではないと思います。
ただ、私たちから見ると、局所的な部分にこだわりが強すぎると、家づくり全体
を見失うことになると思うのです。

ただ、材料選択はあくまで、家づくりの行為の一部です。
家づくりには、ソフト面としての住まい方や、美意識などから生まれてくるものが
ハードとしての材料や、もっと大きなプランニング、美的な気持ちの良い空間が生
まれて来るのであり、どちらか一方通行では片手落ちだと思います。

また住宅づくりは、設計者や職人達の共同作業であり、そのネットワーキングにも
家づくりの醍醐味があると思います。

メールにも書きましたが、私たちはプロであり、与えられたフィーと時間の中で、
全力を挙げて、最善を尽くすことが使命です。
特に、インターネットを活用したコミュニケーション型の家づくりは、際限なくコ
ミュニケートが可能になり、だんだん煩わしさが生じてきます。
ただこれは、情報化時代の特徴でもあり、仕方が無いことなのか、進め方が悪いの
かは試行錯誤しています。



 >今回、建て主として、設計家にお願いすることとなり、
 >・設計家の方へお支払いするお金
 >・実際に家そのものにかかるお金
 >これら全てが、自分たちが日々働いて稼いだものから支払われるのだというこ
 >とをしみじみと感じました。となると、やはり材料にもこだわってしまうし、
 >それを専門家の方に調べていただきたくなってきてしまうのではないでしょう
 >か?それに、建築予算に制限がある以上、少しでも安く同じ品質の材料を手に
 >入れたいと考えるのが建て主側の考えなのではないでしょうか?
★私自身は、その点に関しては、全く同感です。ですから、その点はむしろ感謝
しています。ただ、話題が材料中心に終始して、どうも全体の家づくりの話に、
視点が行かないことが歯がゆいのです。



 >つまり、設計家である大戸さん、ニノミヤさんが私たちに与えたかった情報と
 >私たちが欲しかった情報とがずれてしまっていたということですよね。
★そうではなく、家づくりのフィールドはもっと広いと言うこととを知って欲し
いのです。家づくりを、性能だけで評価するのであれば、とてもつまらないと、
私は感じるのです。
もう少し、数字の話でなく、質の話をしたかったなと思っています。


 >これから先、方向転換するとしても、どうしていけばよいのでしょうか?大戸
 >さんからのメールを読みますと、私たちに、これ以上細かいことに口をはさむ
 >なと言われているように感じてしまうのですが???
★私は、もう少し広いフィールドで、見て下さいと言いたいのです。
例えば、サッシの性能であれば、JISで決まっていますので、それに適合しないサッ
シを探すほうが難しかったりします。それでは、釘は、鉄筋は、コンクリートは、
などと際限なく材料の仕様のことばかり気になりませんか。
これから、現場では、各職人が、美技を披露して、工事を進めます。
工事を眺めながら、空間のボリューム、素材感、住まい方などもう少し質的な点を
ご覧になって欲しいのです。
ですから、口を挟むなということではなく、目を少し離して、遠くから眺めて欲し
いと思っています。細かいことばかり見ていると、結局損をしますよと言いたいの
です。もちろん、間違いなどのご指摘は、どんどんお願い致します。



 >正直申し上げますと、私は大戸さんが書かれている「家づくりの本質、つまり
 >クライアントと建築家が協同して、新しい住まい方を発見したり、空間を作り
 >出したりということ」に関しては、最初の段階で終了して、次の段階として設
 >備のこと、材料のこと、データのことに移っていったものだと理解していまし
 >た。ですので、間取りにこだわっていた私は、もう口出しする段階は過ぎてし
 >まったものと思っていました。
 >普通の家作りでは、大戸さんがおっしゃっているようなことが最終段階まで続
 >いていくのですか?もし、そうだとしたら、「ON邸の家作り」はきっとおも
 >しろくないでしょうね。でも、そういったクライアントがいてもよいのではな
 >いでしょうか?設計家のかたは、一生のうちに何件、何十件もの家建築に携わ
 >るでしょうが、私たちが家を建てるのは、一生のうちで1度(良くても2度)な
 >のですから?!クライアント(主人)は、設備のこと、材料のこと、データの
 >ことなどの話し合いに満足していると思いますよ。なーんて思ったりもしてし
 >まいます。(正直なところ…)
★余計なお世話だと言われそうですが、ON邸に関しては、クライアントと一緒
につくっていく感じが、少し薄いような気がします。
ただ、つまらないと言ったのは、非難しているのではなく、軌道修正すれば、も
っと楽しい家づくりになるのにと思ったからです。



 >ただ、大戸さんたちも少しでも楽しくなるよう、「住まいの質的変化」につい
 >て、提案してくださればと思います。こちら側が見落としていたこと、思い込
 >みすぎていたことなどが発見できたりすることもあると思います。また、私が
 >口をはさめるような話題も出てくるかもしれませんね(笑い)。
 >
 >>ただ全体を通して、デザインのこと、リビングの空間のこと、美しさのこと
 >>などはほとんど話題にもなりませんね。
 >お金に余裕があれば、あれこれ色々とご相談していきたいと思っていたのです
 >が…(と私は思っていました。)
★設計の段階では、建築家でも80%程度しかどうしても把握できないものです。
常にそう言った意識(よりよい空間、よりよいデザイン、よりよい気持ちの良さ、
よりよい素材の上手い表現などなど)があれば、現場で改良、軌道修正を重ねて、
よりよいものが出来ると思っています。
 性能や数字ばかり見ていると、そう言った点を見逃してしまうと思います(も
ちろん蔑ろするわけではありません。)。だから、今回のような発言をしたのです。



 >あと数ヶ月で自分の家ができるかと思うと、ワクワク楽しみです。
 >きっと、また主人も無理なお願いや質問などするかと思いますが、よろしくお願
 >いします。
 >子供がそばで騒いでいるので、読み直していません。すみません。
★ありがとう御座いました。今日、午後現場に行きます。

ということで。
  *****  建築計画網・大系舎 大戸浩  *****
  *****  http://www.campus.ne.jp/~ooto/taikeisha.html  *****




[1999/10/18]ONさんからのお返事

こんにちは、大戸さん、二宮さん。ONです。
大戸さん、二宮さんのメールを読んで色々考えました。

まだ、あまり考えがまとまっていませんが、あまり時間をおいても考えがまとま
るとも思えないので、送ってしまいます。

--
今までの過程を振り返ると、大戸さん、ニノミヤさんのおっしゃる通り、設備や
仕様といった面に費やした時間が多すぎるのかもしれません。ただ私が建築に関
わっていく方法として、客観的に評価できる設備や仕様といったハード面を明確
にして行くアプローチが自然でした。この点はまずご理解下さい。

今回の大戸さんや二宮さんのお話は、要約すると、(1)設備や材料や仕様がよい建
物が、いい建物ではない。(2)設計は80%までで、残り20%の部分が重要だという
ことだと理解しました。
私の認識では、実施設計が終わった段階でもう95%くらいは建築という仕事は終
わっていてあとはきちんと施工管理すれば建物はできると思っていたのですが、
実は違うのですね。
ですから、工事契約が終わった段階で、私の建築への関わりはほとんど終わって
いて、後はできていく建物をチェックしていけばいいという意識だったのですが、
まだまだこれからの関わり方次第で、出来上がる建物の「空間の質」を変えてい
けるということなのでしょうか?

上で書いたように、私自身、設備や仕様といった見方からしか今の設計を見てい
ないものですから、じゃあ空間の質を考えようといわれても、ちょっととっかか
りがつかめません。色々助言して頂けると助かります。




[1999/10/18]大戸からONさんへのお返事

ONさん、Y子さん。大戸です。
メールいただきまして、ありがとう御座います。
怒らずに、お返事いただいていることも感謝しています。

それと、この意見は大戸個人の話ですので、二宮さんはどうお考えかは不明です。
二宮さん、ご意見お聞かせ下さい。

>今までの過程を振り返ると、大戸さん、ニノミヤさんのおっしゃる通り、設備や
>仕様といった面に費やした時間が多すぎるのかもしれません。ただ私が建築に関
>わっていく方法として、客観的に評価できる設備や仕様といったハード面を明確
>にして行くアプローチが自然でした。この点はまずご理解下さい。
★それは良く分かります。比重の掛けかただけの問題です。


>今回の大戸さんや二宮さんのお話は、要約すると、(1)設備や材料や仕様がよい建
>物が、いい建物ではない。(2)設計は80%までで、残り20%の部分が重要だという
>ことだと理解しました。
★ちょっとニュアンスが違うのですが、設備はもちろん、大切です。ただ比重の問
題であり、設備はあくまで建築の一部つまり、直感的に言って2、30%くらいの
ことなのだと思うのです。設備や環境は科学であり、建築や住居は、科学プラス、
美意識や文化に通じるもの(=それが重要)があると思っていますし、面白い部分。

それと、設計は80%までしか押さえきれ無いので、残りの20%は現場で改善し
ていくものだと思っています。どちらも重要だと言うことです。そして、その20
%に創造的な部分が残っているのだと思っています。




>私の認識では、実施設計が終わった段階でもう95%くらいは建築という仕事は終
>わっていてあとはきちんと施工管理すれば建物はできると思っていたのですが、
>実は違うのですね。
★絶対に違います。比較は出来ないのですが、私が監理するのと、二宮さんが監理
するのであっても差がでます。当然、建匠とそれ以外の工務店であっても違います。
ONさんが施主である場合と、一度も現場に顔を出さない施主がいたとして、それ
も違います。
近代技術は、誰がやっても同じものが出来ることをめざしましたが、私はその逆で、
関わった人の個性が、表現される住宅が面白いですし、めざしています。




>ですから、工事契約が終わった段階で、私の建築への関わりはほとんど終わって
>いて、後はできていく建物をチェックしていけばいいという意識だったのですが、
>まだまだこれからの関わり方次第で、出来上がる建物の「空間の質」を変えてい
>けるということなのでしょうか?
★勿論です。もう、非常用の井戸水を発見しましたし、何が起こるか分かりません。
現場のチェックは、ONさんの代理人である私にお任せ下さい。監理料が無駄ですよ。

これからは、発見の連続であるはずです。クライアントは建築家が設計段階での認識
度が80%のところを20%に読み変えて下さい。だから、現場では、未知数が80
%残っているはずです。




>上で書いたように、私自身、設備や仕様といった見方からしか今の設計を見てい
>ないものですから、じゃあ空間の質を考えようといわれても、ちょっととっかか
>りがつかめません。色々助言して頂けると助かります。
★分かりました。そういっていただければ、幸いです。
今後は、設備類は必要最低限にして、少しいろんな話題を題材に、家づくりを楽しむ
ようここがけましょう。現場の職人や江川さんに積極的に声を掛けて下さい。
以上、よろしくお願いいたします。

 
---   ooto@taikeisha.net ---




[1999/10/18]二宮からONさんへ

こんにちはONさん・Y子さん・大戸さん、二宮です。


> それと、この意見は大戸個人の話ですので、二宮さんはどうお考えかは不明
です。
> 二宮さん、ご意見お聞かせ下さい。

了解です。ほぼ同意見なのですが、下記だけは少し違うかな?。



> 近代技術は、誰がやっても同じものが出来ることをめざしましたが、私はそ
>の逆で、 関わった人の個性が、表現される住宅が面白いですし、めざしています。

「誰がやっても同じものが出来ること」って素晴らしい事だと思います。
例えば、(高度なレベルで)設計図書が完成した時点で設計の99%が完了する
事。
一つの設計図書で、全国至る所で全く同質の建築が出来たら素晴らしい。
そうなれば、本当の意味で建築業界の情報化社会が成立するのだと思います。
でも、絶対にそうならない(笑)。
工場生産されるPCや自動車でも当たりアズレがあるし、
また、個々人を「住まわせる」住宅においてその趣向は千差万別、
更に土地の形状や方位、法規制などを考慮すると、
もうそのバリエ?ションは途方も無いものになります。
ハウスメ?カ?が、幾ら「オプション」を増やしても追いつかない(笑)。
第一「画一化」を望まない人達って、実は潜在的に凄く多いと思います。
住宅建築においては「誰がやっても同じものが出来ること」は不可能なんじゃ
ないか
と思います
・・・・・・・アレ?、これじゃあ大戸さんと同じ結論になるなあ(笑)。

建築という作業は、アナログであり続けるしかないし、それが良い所だと思い
ます。
建築のデジタル化って「マトリックス」のように(観ました?)、
脳に電線つないで、電気的に仮想現実を体感させるしかないんじゃあないかな
あ
(笑)。

話がそれたような気がしますが、まあ、そんな感想です。

では。




[1999/10/?]その後

こんなメールのやり取りをおこなってから、みんな肩の力が抜けたようになり、
とてもリラックスしてコミュニケーションをおこなうようになったような気がします。
皆で、協同して家造りを進めるとはとてもデリケートで難しいことだと思います。
そして、コミュニケーションとしての家づくりは面白いことだと実感しています。

 

 

 

 

 

ご相談はお気軽に soudan@taikeisha.net  
〒153-0061 東京都目黒区中目黒2-7-11 宮岸ビル4階
建築計画網・大系舎 1級建築士事務所 03-3716-2918