7,設計者の視点

このTH-HOUSEの設計におけるテーマは、主に次の2つでした。
一つは、老後の家のあり方についてどうするかという点。もう一つは、内装を漆喰塗りで仕上げることでした。
前者については、いろいろと考える機会を得ることが出来ました。
建物の寿命は、人間の寿命よりより長いので、特定の人間の都合に合わせてしまったらその人しか使うことができない家をつくってしまうことになります。
老後の家とはいっても、もし大きな病気を持たない高齢者であれば、あまり老後に特化した設計はかえって、老人しか住めない家をつくってしまうことになります。
家のサイクルの目標は、100年単位であり、人のサイクルは、それより少ない数十年単位です。
そういう意味で、逆説的ですが老後の家は、あまり老後に特化した設計とはしないことになりました。
次に漆喰塗りについて。
漆喰塗りは、高度成長の大量生産がうたわれた時代には、手間や工期がかかり、また割れのクレームをおそれて、高級左官材の代名詞になってしまいました。
しかし、実際にはそれほど超高級の材料ではなく、リーズナブルな価格で塗ることが出来ることをあまり知られていません。
今回は、左官屋さんを設計の時点で指命するという手法を使い、設計の時点で下地や色あいについて、左官屋さんと話し合うことが出来ました。
漆喰壁が塗られて空間に身を置き、呼吸すれば、その生理的な心地よさを体感することが出来ます。
もちろん、視覚的な美しさも兼ね備えています。
なかなか、施主の方が、事前に漆喰塗りの住宅を体験できるスペースがないのも悩みですが、幸い今回はオープンハウスを行うことが出来、何人かの施主候補の方々に漆喰塗りの良さを体感してもうことが出来ました。
今回のプロジェクトは、家づくりとは、建て主だけでなく、家族全員と何らかの関係性の中で、成立しているということを、感じることが出来き、設計者としてとても有意義に感じました。
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