06.クライアントと設計者の「その後」の理想の関係は? ?
前々項で書いたように、3階の熱環境について、TDさんたちは二重窓にするなど、自分たちで問題を解決していました。 二重窓を自分で取りつけるのは結構大変だと思いますし、こうした「工事」を、設計者にも施工者にも頼らず、独力で行っていたことには、正直、とても驚きました。 私なら、すぐに大戸さんに相談したでしょうし、工務店の力を借りたと思います。 ?前項の仕上げ材の話も同様ですが、TDさんたちは、とても自立している印象です。 「自分たちの家なんだから、できることは自分たちでやる。 ちょっとやそっとのことでは、設計者にも施工者にも泣きつかない」という意識がはっきりしているということでしょうか。 でも、個人的には、もう少し大戸さんたちに頼ってもいいのではないかな、と思います。 住宅の竣工引渡しを「娘を嫁にやる気分」と表現する設計者も多いですし、実情を伝えれば、親身になって対応してくれるはずです。 そして、設計者・施工者には、「嫁に出した娘」に対して日常的にもう少し気を向けてほしいとも思います。 いわゆるアフター・サービスは、現状では本当に「サービス」の域を出ていません。 無料奉仕、つまり関われば関わるほど持ち出しになるため、できれば関わりたくないのが本音かもしれません。 しかしそれならば、サービスにとどめないシステムを、設計者や施工者側で考えるべきではないでしょうか。 ?たとえば、1年点検の後は、一定額をもらって、年に一度あるいは2年に一度、家を訪ねる契約をするとか、「奉仕」ではない関係をつくっておくのです。 家の「定期健康診断」と言えば分りやすいでしょうか。 もちろん「再検査」や「要治療」となれば、別途お金も必要になりますが、「早期治療」は結果的に安くつくことにつながるはずです。 お中元やお歳暮、訪問時の手土産などの儀礼的なことにお金を使うのではなく、「家」を介したビジネスライクな関係を続けることがメンテナンスにも有効だと思います。 100年住宅など住宅の長寿命化も話題になっていますが、家は生き物、メンテナンスフリーはありえません。「建てた後」のクライアントと設計者・施工者の関係がよい状態で続くことで、初めて家も長く住み続けられる「よい状態」を保つことができるのではないでしょうか。 ?
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