05.住んでみての感想は設計者にこそ聞いてほしい
住まい手の暮らしが始まってしばらくたってからの取材では、マイナスの話はまず出ません。
なぜなら、取材依頼にOKが出る時点で、設計者に対してワダカマリがない、つまり家に大きな不満がないことが多いからです。
しかしTD邸では、こうしておけばよかったという点をいくつかお聞きすることができました。
家づくりをこれから考える人には参考になるでしょうから、指摘のあったポイントを3つ、書き出しておきます。
1 (特に小さな子供がいる場合には)トイレの壁は、少なくとも床から腰部分までは左官壁にせず、掃除しやすい仕上げにしたほうがよい。
2 (特に小さな子供がいる場合には)脱衣所などの水廻りの床は、濡れても傷まない仕上げを選ぶ。
3 内装を左官壁にする場合、出隅はカバーを取り付けたほうがいい。
いずれも、TD家で傷んだり苦労したりしている部分なので、説得力があると思います。
特に子供が小さいうちは、なかなか大人が思うようには動いてくれませんから、仕上げ材も考慮しておきたいものです。
また、3の出隅については、屋内の動線を考えて、頻繁に人が行き交う部分だけでも対処しておくと、モノや体が当たって壁が欠けることを防げます。
これらは、すべての家で起きているはずの問題ですが、意外に表に出てきません。
理由は、おそらく住み手の方々が、一つひとつを「小さなこと」と判断して、話すことが少ないからでしょう。
でも、こういったことこそ、実は多くの設計者に知っておいてほしいと思います。
たとえば、クライアントからの要求がなくても、「このコーナーは、お子さんが小さいうちだけでも、カバーをしておきましょうか」とさらりと言ってくれる設計者はカッコいいですし、ありがたいです。
こうした知恵や工夫も、設計者は住まい手の人たちから学んでいくのだと思います。
(PREV)←
→(NEXT)
|