03.2世帯で暮らす「覚悟」

2世帯住宅について考える前に、狭小敷地のメリットを一つ。
それは、限られた面積なので、最初から建てる人たち自身が無謀な夢を見ないこと。
その結果、要望がシンプルになり、「潔い」空間性につながっていきます。
TD邸も、敷地およそ22坪と決して広くはなかったため、この例に漏れません。
加えてここに2世帯住宅。
最初から同居に近い構成になるのは納得済みで計画がスタートしています。
2世帯住宅の設計では、世帯間のプライバシーや「適度な距離感が大切」などと言われますが、住む人たちの「覚悟」が一番大きな問題なのは当然です。
同じ建物内に暮らすのだから気まずいことがあって当たり前。
夫婦間でさえ、ときには喧嘩をするのだし、2世帯が常に仲良くなんていられるはずがないというのが大前提。
2世帯で暮らすに至る事情や条件はそれぞれでしょうが、メリット・デメリットを勘案して、メリットに感謝し、多少のデメリットは我慢して乗り越えるのだという強い意志をみんながもっていなければ、どんな2世帯住宅をつくっても、うまくいくわけはありません。
TD邸は、1階にご両親、2階に共有のLDK、3階に若夫婦家族という構成です。
将来的な備えを兼ねて1階にもキッチンがあり、現在は、朝は別々に、夜は2階で一緒に食事をしているそうです。
いつの間にかみんな2階に集まってきて、時間になるとなんとなく上下に分かれていく感じでしょうか。
お話をお聞きしていて、ごちゃごちゃっとした共同生活のなかで、ご両親は若い夫婦を気遣い、若夫婦は両親を尊重する関係が自然にできているのがよくわかりました。
「この、天井が高くなっているのがすごくいいんですよ」と家族で口を揃えるお気に入りの2階リビングでは、子ども(孫)たちも潤滑油となり、「2世帯」という枠を越えた「家族」の暮らしが広がっています。
2世帯住宅成功の秘訣は、なによりも住む人たちの人柄と心構え。それを教えてくれるTD邸です。
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