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06:工事中の施主の仕事

こんにちは,Hと申します。

本日は,大戸さんのホームページを拝見していて家づくりをしているものとして,疑問に思ったことがあったため,ずうずうしいとは思いますが,メールを差し上げました.

疑問とは,オンライン設計室の「ONさんの場合」における「メーリングリストが苦痛に感じてきた」の章に関してです.

わたしもこだわり屋なので,建材や建具や外壁や設備などに相当こだわりましたが,ONさんと同じように,着工すれば「あとはきちんと施工監理すれば建物はできる」と思っていました.

「そうではない」ということは,ホームページを読んでなんとなくわかったつもりです.私は,同じ楽譜でも,NHK交響楽団とベルリンフィルハーモニーオーケストラと(論外にしても)どこかの市民サークルの演奏では違いが出るし,指揮者がカラヤンか小澤征爾かによっても違いが出るようなものだ,と理解しましたが,正しいでしょうか?

ただ,じゃあ施主は具体的に何をすれば良いのでしょうか?
現場のチェックは設計士の方に任せればいいんですよね?

「もう少し質的な点をご覧になって」と言われましても,着工してからの変更は高くつくし,バランスを崩すと聞いています.また,変更が多いようでは,設計段階での練り込みが足らなかった証拠だ,とも思います.ですが,変更をしないのであれば,つまり見ているだけでは何もしないのと違わないのではないでしょうか?

それとも,(先のオーケストラの例のように)聴衆の態度によって演奏の乗りが違ってくるというような話なのでしょうか? どうもよくわかりません.

同様にまったく現場を覗かないのは,自分の家を人任せにする態度のようで嫌だし,あまり現場を覗きすぎて,現場の人が監視されているみたいだと思っても困ります.

気が向いたら,お時間がある時に御教示いただけると嬉しいです.

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こんにちは、Hさん。建築計画網・大系舎の大戸です。
細かなところまで、読んでいただき有り難う御座います。

 

ご質問の件、これは設計者の考え方によっていろいろだと思います。
電子メール(主にメーリングリストという機能)は、クライアントや現場とのコミュニケーション=主に情報の共有化という意味で、非常に便利に使っていました。いわゆるネットワーキングということです。

ところが、インターネットで繋がっているからといって、それを主に管理目的で使うと、もうそれはネットワーキングではないのです。私は、真の意味で『ネットワーキング=皆で協力してつくる』ということを、家づくりで体現することが目標です。

現場を監理するという意味は、人を監理するのではなく、ものを監理することだと思っています。

職人(設計者を含んで)の力を十分引き出すことは、難しいですが、大切な要素だと思っています。職人を管理するという視点では、上手く働いてもらえ無い。

以上の理由で、現場に入ってから、施主が管理目的で、メーリングリストを使いだしたら、上手く機能しなくなりました。(私はとても苦痛を感じました。)

☆それと、もう一つ大切な話。これも設計者によって異なる話かも。

私は、設計図とは建築家自身でも、1,2割程度は、現場にならないと分からない部分を秘めていると感じています。いくら模型を作っても、やはり思わぬことがおきることがよくあります。ご存じの通り、空間を決定しているファクターは、非常に多くあります。隣合う材料の相性、思わぬ見え方などなど。

だから、デザイナーは現場を大切にするはずです。最終的に、自分の目で確認していきます。

また設計時に、上手く出来なかった点でも、現場でよりよい解決方法が見つかることも良くあります。

だから、現場監理とは、設計の延長つまり、よりよい空間が出来るなら、クライアントと相談しながら変更を厭わないという姿勢でいつも行っています。

☆施主としては、基本的に監理は、設計者に任せる。そして、現場を見に行くのは問題ないですが、変更、疑問点などの相談は常に設計者に行い、現場に直接指示しないことが大切です。

このことは、人任せではありません。なぜなら監理者とは、施主の代理者ですから。
以上です。説明になっていますか?

今後ともよろしく。


Hさんのお返事から
つまり,現場にならないとわからない部分もあるし,よりよい解決法が見つかることもあるので,着工したからといって,設計は終わったわけではない.
より良い住まいに仕上げるためには,最後(竣工)まで改良の努力を行うことが重要である.
施主は,現場の監理よりも自らが住まうことをイメージし,住まいとしての改善に力を注ぐべきである. ただし,(できることとできないことがあるので)改善は施主と設計者(と施工者)が相談しながらやること.
…というのが御主旨だと理解しました.
なるほど,現場は「設計の実装(または実現)」ではなく,
「設計の延長」なのですね.
どうもありがとうございました.
好意的なコメントありがとう御座います。(大戸)