住んでから少し時間が経過した住宅の様子を
レポーターの市川さんを通して表現しています

墨田区に建つ鉄骨3階建て住宅。60歳代の夫婦が老後を楽しむための楽の住まい。
-Vol.5-
都心回帰の家(老後の家)
- YA-house -
« YA01  YA02  YA03  YA04  YA05  YA06  写真  図面  概要  » 家づくり・リストへ戻る »

6.有名建築家に頼む?

 YAさんのお話は、とても論理的で明快です。数年前まで大学の先生をされていたと聞いて納得。でも、それなら大学の同僚にも有名な建築家がたくさんいたはず。

 

 「建築の分野の先生に親しくしている人はいませんでした。それに大学の施設は、建築家としても高名な何人かの先生が設計していますが、総じて使う側の評判はよくないんです」

 これはよく聞く話です。有名建築家の建物は、すごく使いにくかったり管理が大変だったりメンテナンスにお金がかかったり。「使う」側からの視点と大きなズレがあるケースは少なくありません。 では、大学で教えているような有名建築家に住宅を頼むとどうなるか?

 私の友人に、某私立大学で教えている建築家(仮にNさんとしましょう)に自宅の設計を頼んだのがいました。設計料は120万円。破格です。要望もいろいろ言ったわりには、丁寧に対応してくれたようです。竣工後は建築雑誌にも掲載されました。これはお得か。

 率直にいって、やはり設計を専業としている人(つまり設計事務所だけで食べている人)とは、かなり違う印象をもちました。

 Nさんにとって友人の「要望」は、クリアすべき「与条件」の一つであって、住み手の生活や暮らし方に興味があるとは思えなかったのです。Nさんの興味は、どんなハコをつくるか、どうやってつくるか、それらがどのような空間に結びつくか、などに向けられているように見えました。友人も、変わった人間でしたから、二人の距離感はうまくいっているようでしたが、「マイホームの夢を託そう!」といったタイプの建て主にはあまりお薦めできないなぁ、と横で見ていて思ったものです。

 

大学の先生兼建築家でも、人によってタイプはさまざま。一概に決めつけることはできませんが、専業の設計者とは少し違うかも、ということは認識しておいたほうがいいのかもしれません。
(文:市川隆)

YA-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP><オンライン設計室><No.22 YAさんの場合>
を参照ください。  

 

(PREV)← →(NEXT)
« YA01  YA02  YA03  YA04  YA05  YA06  写真  図面  概要  »