3.「終の棲家」=「高齢者の家」ではない
 YA邸では、お二人からの要望を受けて大戸さんもいわゆる高齢者対策を施しています。ホームエレベーターや玄関脇のベンチなどは、その代表例と言えます。
「できるだけ長いあいだ2階、3階も使って暮らすことを考えると、エレベーターは必要だと思いました。今でも荷物が重いときなどはよく使っていますよ」とYAさん。
「機械ですから、まったく使わないより、常時使ったほうがいい」という合理的な理由もあるそうです。エレベーターについては、このシリーズのVOL.1でもVOL.4でも紹介しているので改めては述べませんが、高齢化対策としても都心では欠かせないものとなっています。
「終の棲家」という言葉があります。「人生の最期を迎える家」という印象ですが、いつからそこに住むかは人それぞれ。20代、30代から住んでもいいはずです。
実はYA邸の特長は、「終の棲家」でありながら「高齢者用の家」に見えないところなのだと思います。サイトのYA-HOUSEのコンセプトで、平面図にたくさん特徴が書き込まれていますが、そのなかで「高齢者だから」と言えるものは数えるほどしかありません。
 大戸さんが気を配っているのは、決して大きくないワンフロアをいかに効率よく使うか、それぞれの居場所をいかに心地よくできるか、ということでしょう。それは高齢者であろうと若い世代であろうと変わりません。
もちろん、すでに車いすの生活であったり、麻痺があったりするのなら、それらに対応した配慮は必要です。でも家づくりの基本はきっと一緒。少しでも長くそこで幸せな時間を過ごせること。
YA邸は、ご夫妻のはっきりした考え方と大戸さんの思いが、過去の思いが詰まったたくさんのモノ、それらに囲まれる今、そして誰もが迎える高齢の未来、という時間軸を包み込み、肩の凝らない、良い意味での「普通」の空気が感じられました。

YA-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP> → <オンライン設計室>→<No.22 YAさんの場合>
を参照ください。
(PREV)←
→(NEXT)
|