4,下町の家と土間の効用
建築家が関わる住宅で、大きな土間のある家は少なくありません。ライフスタイルに合わせて、アウトドア用の作業場であったり、自転車などを置くスペースとして活用したり、その用途はさまざまです。
しかしAS-houseの場合、そうした土間とは少し違う意味がありそうです。
そもそも敷地17坪での計画ですから、室内面積に余裕はありません。 無理をすれば、もう一部屋、玄関脇につくることだってできたはず。
それなのにここが玄関と一体の大きな土間とされているのは、ここが「室内」というより「半屋外」と意識されているからでしょう。
近所の方が来られたときのおしゃべりの場として、あるいはお祭りのときの一時休憩所として。
先ほど、下町の家では意識が外に向きやすいと書きましたが、ここではその「外」が土間によって内側に引き込まれるのです。
外を引き込むための仕掛けとして、広い土間が用意されているといってもいいでしょう。
つまりAS-houseには、玄関扉と土間という二つの境界があって、「外」は段階的に生活スペースにつながっていくのです。
土間は、家のなかだけど限りなく外に近い。 そんな特別の空間として用意されているように感じます。
普段は、ASさんの趣味のものを飾るギャラリーとなっている土間は、ご近所の人たちにも入りやすい「井戸端」として、住まい手と近隣の人たちを結び付けていくのではないでしょうか。
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