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08:2世帯住宅の計画

こんにちは、Nと申します。
父の土地に二世帯住宅を計画しています。

 さて、それで何を悩んでいるかというと、父との考え方の差です。

 わたしに娘が生まれたのと(現在3歳半)、現在親が住んでいるビルでの生活が大変になってきたため(階段の上がり降りが)、2,3年前からこの話が持ち上がって来ました。
それ以来住宅雑誌や住宅関係のテレビ番組を見て、憧れを膨らませて来たわたしと違い、父は「なるべく安く」「住めればいい」という感じなのです。

 しかも、地下を造りたいということが問題になっており、(今住んでいるところの方が広いため、荷物などがたくさん入れたいそうなのです)地下室の坪単価が高いので、安いところに頼みたいということで、あるハウスメーカーに今試しに図面を書いてもらったようなのですが、私たち夫婦はそれが気に入らず何とかならないかな〜、と考えています。

 ハウスメーカーに頼むと
 ・手抜き工事をされそうで恐い。
 ・自由に意見を言って作ってもらえなそうで嫌だ。
 ・○○という会社の出した予算(地下室が坪50万)というのは怪しいが、どうやって判断したらいいの わからない。すごく不安。
 と、危惧しています。


 予算は 父 *000万、兄 *000万、わたし *000万という
予定なのですが、父が建築家に頼むのを嫌がる理由は

 ・それだけ余分に設計料を取られ、高くなる

 ということなのですが、いくら「ハウスメーカーだって設計料はどこかに入ってるよ」と言っても、なかなか納得してくれないのです。

 ・狭小地
 ・日当たりが悪い
 ・父は店舗つきの住宅にしたい(できれば6坪程度)
 ・二世帯住宅(地下〜2階:店舗+父の世帯、3〜4階:
 わたし達の世帯)


 と、悪条件が重なるため、建築家の人にじっくり考えて建てて欲しいのですが、父と意見が対立しており、本当に悩んでいます(どう説得すればいいのか)。

 地下室の予算さえ低く抑えられれば父のことも説得できるのですが、何か方法はないでしょうか。

 最悪の場合、○○ハウスメーカーという会社にお願いすることになったとしたら、欠陥住宅にされない為に何かできることはないでしょうか。

 夫はとにかく○○ハウスメーカーに拒否反応を起こしており、躯体だけ作ってもらって、自分たちの住むところだけは建築家の人に設計・監理してもらいたい、などと言っているのですが、そのようなことは可能でしょうか。

 躯体が一番大事だと思うのですが、第三者に入って見てもらった方がいいのでしょうか、また、そんなことは可能でしょうか。

 今はとにかく「地下室の予算をどうやって低くできるか」ということにかかっており、もし大系舎さんにお願いするとしたら、やはりどこの工務店に頼んでも、地下室は高くなるのかを知りたいです。(建築業界の現状がわからないので)

 また、○○ハウスメーカーだと「図面も適当で、打ち合わせも大してしてもらえないのではないか」と思って心配しているのですが、そんなこともないのでしょうか。

 とにかく、今はとても落胆・混乱をしていて、まとまりのない内容になってしまっているのですが、申し訳ありません。
 父にとっては「ただ住めればいい家」でも、わたしにとっては一生に一度のことであり、「住宅雑誌のような素敵な家を!」というとミーハーっぽいのですが(別にカッコイイ家は望まないけれど)じっくりと大事に考えてもらえる人と、納得した家作りをしたいのです。

 高いお金を払って、我慢して暮らさないといけないとしたら、今よりもう少し広めの中古マンションを買って、そこに移った方がマシだと思ってます。

 ご縁があるかどうかはわかりませんけど、メールさせていただきます。
 お忙しいと思いますが、お返事お待ちしています。

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こんにちは、Nさん。
建築計画網・大系舎の大戸です。

メールいただきまして、ありがとうございます。
内容拝見させていただきました。
それではまずはお返事です。

■2世帯住宅の出発点
2世帯住宅の計画の出発点で意見調整がうまく進まず、悩んでいらっしゃるようですが、
ある意味これは、2世帯住宅計画を進める上での典型的な悩みかもしれません。

一般的に世代間の住宅に対する価値観は、異なるのが普通です。それが2世帯住宅計画の
出発点だと思います。

特に最近はインターネットやTV、雑誌から、家づくりの情報を取れるので、家づくりに
対する情報量に世代間で差が出てきているケースが多くなっているように思われます。そ
のあたりが、世代間の価値観共有意識を余計に難しくしている原因かもしれません。

ただ、2世帯住宅は、価値観が異なる世帯が、一つ屋根のもと、一緒に住むことになるわ
けですので、お互いの理解が必要不可欠になります。

設計時点だけでなく、お住まいになった後のことを含めて、現在の話し合いを通した相互
理解が重要になるような気がします。

こういったコミュニケーションを通して、お互いを再認識することで、距離感を確かめる
ことになるので、うまく進めば逆に良かったと思えるようになると思います。


■事例
当事務所で設計をして、近年都内に竣工したオンライン設計室NO.20ki-house は、3世帯住宅です。
鉄骨3階建てのホームエレベーター付き専用住宅です。

この3世帯住宅を計画するにあたって、一番労力が必要だったことは、やはり世代間の価
値観を調整することでした。

お年寄りは、大きな変化を受け入れるのは難しいので、普通は保守的になりがちなのです
が、そのあたりを時間をかけて話し合い、調整いたしました。

このご家族の場合、一番若い世代の奥さんがキーパースンになり、時間を掛けて、おじい
ちゃん、おばあちゃん世帯(70代)と話し合い、またお父さんお母さん世帯(50代)と話し合
い、ようやく意見調整にこぎ着け、そこから設計が一気に進んでいった経緯があります。

2世帯住宅の計画の場合、ハードの設計も大切ですが、出発点におけるソフトの話し合い
が、設計の重要な仕事であることを痛感しました。


■さて、地下室について。
一般的に地下室は、計画地の地下水位の位置、上部構造の階数、計画地の工事難易度など
の関係で、工事費は大きく変わってきます。
また工事費は、面積が小さければ小さいほど割高になります。

コストは全体のバランスがありますが、一般的に地下室の坪単価が50万円ということは、かなり難しい数字のような気もします。

物を置くだけの本当に倉庫のような伽藍堂の空間だけなら可能かもしれませんが、居室的
な要素が入れば、難しい金額だと思います。

見積もりの中でここだけ切り取っていくらというのも、難しい部分もあるので、この坪50
万円という数字が一人歩きしているような気もします。

ところで今回のご計画地に、本当に地下室が必要なのか、ご検討はなさっていますか?

地下室は、湿気があり結露が発生しやすいので、一般的に物をしまって置くには不適切な
空間です。その場合、結露対策など必要になってくると思います。

一般的には地下室をつくるより、地上階をつくるほうが安くつきます。

低層住宅地では法律的に上階に居室をつくれない場合が多いので、地下室をつくることがあります。
また工事費全体の話ですが、最近の物価上昇の傾向で、少々上がり気味です。


■建築家に頼むメリット。
建築家に依頼するメリットは、まずはデザインということもありますが、建築家には
その他にコストコントロール、構造安全性の確保などの役割があります。

デザインは、建築家にとって一番得意な分野のですが、実はこれだけが役割ではありま
せん。

施主の代理人として、専門家としての立場で、コストや安全性を確保します。
弁護士のように第3者的な立場で、工務店のコストや工事内容をチェックします。

コストコントロールについては、第3者の立場でコストのチェックをしていきます。

設計施工は請負会社自身が、コストを管理することになるので客観性に欠けます。

施工者を決める場合も、工務店を数社競争入札させて、第3者の立場でチェックし、決定
していきます。工事中も施主の立場で監理を行います。

構造安全性に関しては、姉歯事件のようなことが無いように、優秀な構造設計者のもとで
構造計算を行い、またその品質が担保されるように現場監理を行います。

ですから、私たち設計者にとっては設計料は必要です(笑)。


設計料とは、ほとんどが人件費ですから、それが安いということは、それだけ手を抜かざ
るを得ないことを意味します。

特に設計施工による場合は、設計料は別の項目として入っているので、一見設計料を安く
見せていることもあるようです。

取りあえずお返事は以上です。
今後ともお気軽にご相談ください。

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