| |
q.jpg




05:大家族住宅の建て替え

はじめまして。
時々Hpを見させていただいて家作りの夢を膨らましています。

現在家の建て替えを検討していますが、家族が多いので、なかなか話がまとまりませ
ん。少しでも家族のそれぞれが疑問に思っていることや不安に思っていることを解消
できたらと思い、メールしてみました。お返事を頂けたら幸いです。

我が家は現在都内の25坪の敷地一杯に建てたほぼ築50年近くの木造2階建てに、
4世代10人で暮らしています。10人というと驚かれるかも知れませんが、祖父母
(70代)・両親(50代)・私達夫婦(20〜30代)・2歳の娘・シングルマ
ザーの妹(20代)・3歳の甥・今年大学を卒業する末の妹で10人です。そして私
のお腹には来年の1月に生まれる予定の子どもが一人。

 今まで10人狭いながら暮らしてこれたのは、居心地の良さだと思います。うちは
代々大家族で暮らして来ていた様で、人数の多さに対するうっとうしさはさほどない
ように思います。でもさすがにもうすぐ11人となると、この先どんどん大きくなる
子どもを前に我が家はどうなっていってしまうのだろうと不安になり、そろそろ立て
替え時ではないかということになったのです。
 
現在は25坪一杯に建てていますが、建て直すとなると建蔽率で小さくなってしまう
ので、4・5階だてを考えています。4・5階建てになるとRC造になりますよね?
うちの祖父母は家はRCより木造の方が長持ちをすると思っているのですが、どうな
んでしょうか?(建てなおしても今住んでいる家のように何十年も持つ家でないと立
て直さないほうがいいと思っているのです。)
 
それから今住んでいる家は大部分を桧を使って建てているそうです。50年近く住み
なれた家なので当然愛着もあります。建て直す場合、今の建材の一部を再利用したり
することは可能ですか?

それから4・5階建てになるとエレベータも付けたいです。

我が家は首都高のすぐ下に建っています。木造の家なので車の振動や騒音は日常的に
あります。騒音などはどの程度改善できるでしょうか?

私はよくある2世帯・3世帯住宅というものではなくて、ホテルのように個々の部屋
である程度プライバシーを保ちつつ、リビングやダイニングでは家族がいつも顔を合
わせていられるような家がうちには良いのではと考えていますが、いいアイディアが
あれば教えてください。

突然いろいろ書いてしまいましたがお返事をいただけたら嬉しいです。

model_39.jpg


a.jpg

はじめまして。建築計画網・大系舎の大戸です。

HPご覧いただきありがとうございます。
またこの度は、メールありがとうございます。

それでは、早速メールのお返事です。

>はじめまして。時々Hpを見させていただいて家作りの夢を膨らましています。
>現在家の建て替えを検討していますが、家族が多いので、なかなか話がまとまりませ
>ん。少しでも家族のそれぞれが疑問に思っていることや不安に思っていることを解消
>できたらと思い、メールしてみました。お返事を頂けたら幸いです。

■大家族の建て替えは、スタート台に付くまでが大変でしょうね。
各世代で、抱えている意識や問題が違うし、感覚も違う、価値観も違うといった具合で、
建物は1棟なので、一本化するのが大変ですね(笑)

少し時間をかけて、皆で話あいながら妥協点を探りながらまとめていくのが理想でしょ
うね。もし頑固な方とかいらっしゃると、結構まとめが難しいこともあります。(笑)

結局各世代の価値観の相違は、仕方ないですね。だからそれをなるべく否定するのではな
く上手に取り込みながら、どこで妥協できるかという接点を探すことが設計の大きなポイ
ントですね。時間が必要ですね。

逆に、こういったプロセスを通して、家族が一致団結したり、家族のこれまで知らなかっ
た面、近い将来の家族の姿などが見えてくることもあり、これらの苦労はデメリットだけ
ではないと思います。


>我が家は現在都内の25坪の敷地一杯に建てたほぼ築50年近くの木造2階建てに、
>4世代10人で暮らしています。10人というと驚かれるかも知れませんが、祖父母
>(70代)・両親(50代)・私達夫婦(20〜30代)・2歳の娘・シングルマ
>ザーの妹(20代)・3歳の甥・今年大学を卒業する末の妹で10人です。そして私
>のお腹には来年の1月に生まれる予定の子どもが一人。
>今まで10人狭いながら暮らしてこれたのは、居心地の良さだと思います。うちは
>代々大家族で暮らして来ていた様で、人数の多さに対するうっとうしさはさほどない
>ように思います。でもさすがにもうすぐ11人となると、この先どんどん大きくなる
>子どもを前に我が家はどうなっていってしまうのだろうと不安になり、そろそろ立て
>替え時ではないかということになったのです。

■居心地の良さとは、"住宅の良さ=ハード"と、"家族関係の良さ=ソフト"両面の
反映でしょうね。でも、11人とはすごいですね。サッカーできますのね。
家族大勢で苦楽をともにできるのは、大きな財産ですね。

>現在は25坪一杯に建てていますが、建て直すとなると建蔽率で小さくなってしまう
>ので、4・5階だてを考えています。4・5階建てになるとRC造になりますよね?
>うちの祖父母は家はRCより木造の方が長持ちをすると思っているのですが、どうな
>んでしょうか?(建てなおしても今住んでいる家のように何十年も持つ家でないと立
>て直さないほうがいいと思っているのです。)

■まずこの敷地は、商業地域、防火地域という都市計画上の制限があり、残念ながら木造
で建て直すことは不可能です。
ですから、建て替え時には耐火建築という、火事や震災に強い仕様を要求されます。
耐火建築とは、鉄筋コンクリート(RC造)、または鉄骨造(S造)、鉄骨鉄筋コンクリ
ート造(SRC造)という構造が必要です。

さて、木造の方がRCより長持ちかどうかという話ですが、一般的にはRCの方が耐久性
があります。

ただ木造は耐久性が無いわけでなく、使用木材、工法などにより、全く違うと思います。
良く例に出されるのが奈良法隆寺。木造で千数百年以上保っている。でも、これはやはり
特別です。材料、メンテナンスなど国宝的扱いです。
最近の木材は、良質の杉や檜であっても、防火の制限で真壁という柱や梁を露出する工法
を採用出来ないので、壁の中に封じるので蒸れて腐りやいものになってしまいます。だか
ら、木造で耐久性を上げようとするのは、結構難しく、高価なものになりがちです。

KIさんのお宅を拝見しないと何とも言えませんが、昔の住宅も材料工法により大きく違
います。お祖父お祖母さんさんの思い入れも大きいかもしれませんね。

一方、RCでは、近年酸性雨の影響で、中性化(=劣化)が早いということが言われてい
ます。コンクリートは健全な状態ではアルカリ性であり、中性化は劣化を意味します。

ただきちんと設計し、施工したものであれば、100年くらいは持つはずです。例えば、
築地本願寺などは70年くらい前のRC造の建築ですが、今でもびくともしていませんね。

ただし、戦後高度成長期やバブル期につくられたRC造は、不良品が多いのも事実です。
当時は大量消費の時代で、きちんとしたコンクリートや鉄筋の監理が行き届かなかったこ
とも多いようです。そういったものをお祖父さんは、多く見て来られたので、信用されて
いないかもしれませんね。また阪神大震災の時のイメージも残っているのかもしれません
ね。

結論を言えば、RC造はきちんと計画され、施工されれば、100年でも持ちますし、近
年叫ばれている、東海、関東地震、それに伴う火災に対する心配も解消されます。


>それから今住んでいる家は大部分を桧を使って建てているそうです。50年近く住み
>なれた家なので当然愛着もあります。建て直す場合、今の建材の一部を再利用したり
>することは可能ですか?

■それは、もちろん可能です。木材、建具、欄間などを転用して利用することも可能です。

以前100年前に建てられた九州の義父の実家を壊すことになり、梁材の転用で、テーブル
や家具(モダンな仏壇置き)をつくり、家族の記憶として残していくという設計をしたこと
があります。

移設や転用を考え、調査したのですが、目に見えない部分(土台など)で腐りがあり、解体
することになりました。一部の梁や、指物(欄間)などを残しました。
古いものを受け継いでいくのは、すごく大切で、またそのデザインも面白いとその時感じま
した。


>我が家は首都高のすぐ下に建っています。木造の家なので車の振動や騒音は日常的に
>あります。騒音などはどの程度改善できるでしょうか?
■騒音に効果的なことは、2点あります。
一つは、しっかり杭を打ち、強固な支持地盤の上に乗せることで、振動で揺れない建物を
つくることです。地震に対しても強くなります。

それから、遮音に関しては、重量のある壁で、外に対して囲い込むことです。
布団で窓を塞ぐのと、カーテンでは塞ぐのでは騒音が違うと、直感的にお分かりになると
思います。(正確には吸音効果もあります。)
重量のあるRCの壁は、音を跳ね返します。遮音、吸音両面で、静かな空間をつくります。

以上の通り、一般の騒音対策にはRC造が最適です。

model_40.jpg


>私はよくある2世帯・3世帯住宅というものではなくて、ホテルのように個々の部屋
>である程度プライバシーを保ちつつ、リビングやダイニングでは家族がいつも顔を合
>わせていられるような家がうちには良いのではと考えていますが、いいアイディアが
>あれば教えてください。

■良い喩えですね。何世帯住宅というより、ホテルの方がわかりやすく、当たっている
かもしれませんね。最近の住宅は、核家族向きの住宅タイプですから。

5年後、10年後、30年後を考えると、世代交代だけでなく、不透明な部分も多くあり
ます。ですから当然ですが、今も将来も視野に入れたビジョンと計画が必要です。

だから、おっしゃるとおり、最終的には、3つの世帯が独立して住めるような計画はよい
選択の一つでしょうね。

ただ、この敷地の広さと階数で、それが可能なのかは、詳細な検討が必要でしょうね。

まず考えられるのは、1フロアーが25坪*80%=20坪くらいで、エレベーターと階
段を付けると、実質16〜17坪なので、1フロアーだけでは、1家族には狭いですね。
普通2LDK、3LDKのマンションが20〜25坪くらいです。


一般に大家族住宅は、設備や空間の共用部分が多いのでコンパクト化が可能ですが、独立
型は大きめの面積が必要になりがちですね。

ですから1世帯が、1.5または2.0フロアー使えば可能かも知れません。
2フローを使った住宅をメゾネットタイプと言います。

また居住には適しないかもしれませんが、地下の活用なども駐車場、物置、共用室などと
して有効かもしれませんね。ただ立地的に河川洪水の危険があるので計画には注意が必要
です。屋上の庭なども共有できますね。

建築法規の適用に検討が必要ですが、初期は比較的みんなで一緒に住める(空間が比較的
連続している、共用部分が多い)が、徐々に戸建て化していくことが可能な建築というの
も一つのアイデアですね。何となく漠然としていますが(笑)

なお建築は、具体的な場所を拝見しないと、このような漠然とした話になりがちです。
現地拝見させていただければ、もっと詳しいアドバイス出来ます。
必要なら、ご遠慮なくご相談下さい。

と言うことで、今日は失礼致します。

ki_01.jpgKI-HOUSE

※注(このご質問は、オンライン設計室N0.20 KI-HOUSEへと繋がりました。)