1.自転車置き場
今回は、ちょっと意地悪な見方から始めてみましょう。
私が家を見るとき、注目しているポイントの一つに「自転車置き場」があります。
今は家族の人数分、自転車があるのも当たり前の時代。通勤に、買い物に、遊びに、と、庶民の暮らしに欠かせないのが自転車です。
しかし残念ながら、狭い都心の住宅はもちろん、郊外の、比較的広い家でも、きちんと自転車置き場が考えられている家は皆無といっていいほど、ありません。
自転車は、車のように分厚い塗装に守られていないので、雨に濡れれば錆びるし、風が吹けば簡単に倒れて、ハンドルやカゴがゆがみます。だからせめて日常的な雨風程度は防げるように配慮した自転車置き場は必須だと思うのですが……。
車1台分の駐車スペースを確保するのもやっとなのに、とても自転車置き場なんて――。それが本音でしょう。
そこで依頼者も設計者も、みんな自転車に気づかないふりをして、「とりあえず」玄関脇や車と壁の隙間に停めておく。だから住宅街の自転車は、いつまでたっても「仮の置き場」で雨に濡れ、風に翻弄されています。
そうしたなかでかろうじて可能性を感じさせてくれるのが、意外にも狭小住宅。今回のHM邸もそうですが、狭小住宅では、十分なアプローチを確保する余裕がなく、道路際からすぐ囲い込まれるケースが少なくありません。 すると玄関扉は少し奥にあるので、道路際から玄関扉まで、建物に覆われた外部が出現するのです。
HM邸では、間口がちょうどいい寸法だったのでしょう。車を停めて脇に自転車を置いても、人が通れる十分な余裕がありました。壁と2階床のおかげで、自転車は雨風から守られています。 大戸さんが意図したことかどうかは別にして、個人的には嬉しい玄関廻りになっていたのでした。
HM-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP> → <オンライン設計室>→<No.12 HMさんの場合>
を参照ください。
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