2.二世帯住宅とゆったり階段

HM邸は、当初から2世帯住宅として計画が進んでいます。
敷地18坪というのは都心では驚くほど小さな敷地ではありませんが、この規模で2世帯住宅というのは珍しいと思います。
もう1つ、珍しいのが縦に伸びる2世帯住宅で、親世帯、ここではお母さんが上の階にいること。
一般的には、これから高齢になる親世帯が1階中心に暮らす例が多いのです。
この点についてHMさんに尋ねたところ 、
「大体の家の構成が決まって、場所決めみたいなことをしたときに、やっぱり日当たりがよくて環境がいいのは上だってことで、自然に母が上の階になりましたね」
と、気張ることもなく、さらっと答えてくれました。
将来的にも、上と下の場所の交換は考えていないようで、
「母が、どうしても上がれなくなったらエレベーターでも考えます(笑)」
とのこと。
あくまでもお母さんの住環境を優先する思いが伝わってきました。 出ない幽霊に怯えてもしかたない、といいますが、将来に備えることが「今の我慢」につながったのでは本末転倒です。
 高齢化や病気などで階段の上り下りがきつくなるのがいつなのか分かりませんし、どんな状況になるかも予測不能。それならなったときに対応できえる最低限の準備をして、健康な今を快適に暮らすことを考えることが大切です。
そしてHM邸のその「最低限の準備」が、家の中央の大きな階段。面積的にも、また勾配もかなりゆったりとつくられています。
「お母さんが上に行くのは打ち合わせの段階でわかっていたので、ゆったりとつくってあります」
と大戸さん。
小さな敷地だから階段も小さく、ではなく、小さな敷地だからこそ多少大きめにはなっても、階段をゆったりとつくる。それが上にお母さん、下に子世帯の2世帯住宅を支え、お母さんのためだけでなく、若い世帯の上り下りにもありがたい配慮になっています。

HM-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP> → <オンライン設計室>→<No.12 HMさんの場合>
を参照ください。

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