住んでから少し時間が経過した住宅の様子を
レポーターの市川さんを通して表現しています

横浜郊外の、住宅地に建つ木造2階建て住宅です。土地探しからはじめました。
-Vol.6-
シンプルな家
- KN-house -
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7.補章

 

 今回から、私大戸が補章として、コメントを寄せることにしましたので、よろしくお願いいたします。
 第3者の立場として、市川さんに住まいのレポートをお願いしているのですが、市川さんのご意見、ご感想に対して、実際に私たち設計者がどのように考えながら設計していたかを語ることで、市川さんのレポート内容がより一層立体的になり、深まるのではないかと思うからです。

 さて今回の市川さんのレポートの中で、土地選びや設計者選びに、「感覚」や「勘」が大切だと述べられている点は、設計者としてとても共感できることです。

 いくらチェックリストを使って、消去法のように不安な点を消していっても、最良の土地に巡り会えるとは限りません。私たちの経験から言えば、むしろ住むという点に関して、アグレッシブな気持ちでかかわっていらっしゃる人が、「ここが良い!」といって探した土地に建てた家が、結局居住後も良い状態で住み続けられているような気がします。

 つまり「感覚」や「勘」とは、何も考えないことではなく、自分の力で一生懸命考えてるのだけれど、上手く言語化できないある種の重要な判断力だと思います。

 

 私は設計者として、この土地が絶対にお勧めですよとは言えません。なぜなら、土地には様々な条件があり、環境の良さといっても、風景の良さ、駅からの距離、学校への距離、買い物の利便性などは比較的わかりやすのですが、現地の肌で感じる空気、近隣の人々との関係などは、住んでみない分からないものもあります。多くの場合これらの価値観は、個人個人で異なり、それらについては、住まい手である建て主の価値判断力に委ねるべきと考える部分だからです。

  結局設計者としては、いくら頑張っても、地盤が良い、法律的にこの程度の面積の住宅が可能ですよという客観的な条件だけだからです。そして、これらの深い意味での建て主にとっての土地の良さは、チェックリストには乗らない、建て主の勘と言われる部分に委ねられます。そしてこの勘は、決して表面的なことではなく、常に土地探しのセンサーを張り巡らせないと働かないものだと思います。
 そういう意味で、土地の出会いとは、人との出会いと良く似ているように感じています。結局土地探しの秘訣とは、常に良い土地を求めセンサーを張っておくことに加え、多少の運、そして私たち設計者のアドバイスの加わったものだと常々感じています。
(文:大戸浩)

KN-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP><オンライン設計室><"シンプルな住宅"No.25 KN-house>
を参照ください。  

 

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