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小さな店舗併用住宅

23:住んでみて

(2026.05.26)

家は3回建てる?  

「家は3回建てろ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

解釈はさまざまあれど、一般的には本当に満足できる家は2回の失敗を教訓にして3回目に結実する、ということでしょう。
KR邸は3回ではありませんが、以前の住まいでの経験が大きく作用していると言えそうです。  

この家を建てるまでKRさんご夫妻はマンション暮らし。

車椅子対応の点でも「マンションならワンフロアでいいのでは」ということで、フルリフォームして不要な壁などを取っ払った個室のない広々としたところにお住まいだったそうです。

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・旧宅マンションの玄関

しつらえにもいろいろこだわって「理想の住まい」にしたはずでしたが、難点は駅から坂道が続くうえ、そこそこ距離があったこと。

人気のお菓子屋さんを営んでいた奥さんは、電車で店舗まで通うのが日課で、子どもが生まれてからもその往復を続けるのはちょっと無理かも。


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・旧宅のキッチン

そこで店舗併設の自宅建設に至ります。  

なじみのお客さんもたくさんいるので以前のお店からそれほど遠くない場所、となると予算もあるので敷地も小さくなるのはわかっていました。
それでもいいと思えたのは、マンションの「広々とした」部屋がなんだか無駄に思えたから。

「実際に使っていたのは決まったところで、ほかの部分が無駄に思えた」のだそうです。

さらにこだわりをもってつくり込んだ部分は、時間がたってアレンジしたいと思っても難しい。
「だからイメージとしては箱だけつくってくれたら、あとは自分たちでその都度考えていくような感じで大戸さんにはお願いしました」とのこと。

初めての家づくりでこう言える人はなかなかいないのではないでしょうか。

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・建築計画の敷地(36.5m2≒11.0坪)



小さいがゆえの奥行き感  


KR-HOUSEは1階が店舗で2、3階が住居。

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写真でわかるように道路から見て右側がお店の窓口で、中央の木製引戸が玄関になっています。
窓口部分は袖壁と庇でちょっと囲まれ感があり、外でありながら少しほっとできる場所に。


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お店の窓口と玄関扉は木製建具が入っていますが、実は袖壁を設けることで防火規制をクリアしてここに木製品が使える、というのはちょっとした設計テクニック。

既成のアルミ建具などが入っていることを想像すると、お客さんを迎える店舗のファサードとして大きな違いがあるのは明らかです。


2階と3階は住居スペース

ここにご夫妻とこの家で生まれたお子さん、それに猫2匹が暮らします。
2階のダイニングテーブルでお話をうかがいましたが、驚くべきはその居心地のよさ。
延床面積が18.8坪ということなので、平均するとワンフロアは6坪程度のはずですが、狭苦しさがまったくありません。

理由はいくつかありそうです。

まずは光。

2階には道路側と隣地側合わせて4つの窓があって、まんべんなくフロアに光が行き届きます。


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そして視線の抜け。

道路側の窓から遠くまで視線が抜けたり隣地側の窓から外が感じられるのはもちろんですが、室内でもスケルトンの階段や調理家電越しにエレベーターが見え、扉を開け放してある浴室内も眺められます。

それらは「見える」とともに「向こうを感じる」、つまり奥行きを感じさせるのです。



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さらに部屋にあふれる鉢植えのグリーンも、彩りと潤いのほかに、たくさんの「向こう」をつくり出し、同時に室内のあちこちに陰影をつくって空間にメリハリを与えます。

これは憶測になりますが、もしかしたらご主人の車椅子からの視点と奥さんの立っている視点という、高さの異なる二つの視点でものが配置されていることも、部屋の奥行き感やメリハリを高めているのだと思います。

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「箱だけ」というイメージ通り、収納も含めて自分たちで工夫する暮らしを楽しんでいるご様子。

これからお子さんもどんどん大きくなるので、部屋の装いもその都度変わっていくのでしょう。
たくさんの鉢植えを育てるように、KR-HOUSEはKRさんご家族が育てていく家と言えるのかもしれません。

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report by 市川隆