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2007年10月13日
建築基準法改正雑感
先日、NHKのニュースウオッチ9で、今回の基準法改正に関しての報道がありました。
建て主の立場から、建築確認が下りないので、仮住まいの家賃がかさんだり、老人ホームの経営者が、建設事業の予定が立たずに困っているという内容でした。
現在確認申請中の、私のクライアントであるTDさんも全く同様の状態です。
こういった人たちが日本中で相当数いらっしゃるはずです。
国土交通省のコメントでも、早く対処するようでしたが、まだ特にそういった情報は聞こえてきません。
ところで、今回の改正基準法の目的は、構造偽造事件のような犯罪を防止し、構造上安全な建物を担保するということなのですが、一体こんな改正内容で、それが達成できると考えているのでしょうか。
確認申請において提出書類は数倍に増え、構造審査機関を2重にまわり、人と時間をかけてチェックするというこで、より安全な建築が担保されるでしょうか?
また実質設計変更は認めない、などという建築のプロなら首をかしげるような馬鹿げた内容で、偽造を無くして、安全な建築を担保することが可能なのでしょうか?
単純なたとえ話しですが、今回の改正内容は、学校における校則のありかたとよく似ているような気がします。
学校側(国土交通省)は多くの事柄を、校則(法律)で縛るこでとで、学校(建築)を良くする(安全につくる)ことが可能だと考えています。こんな手法では、学校が良くならないのは分かっているはずです。
しかし実際には、良くしようなんてポーズだけのような気がします。要するに、学校側(国土交通省)が、私たちはこれだけのことをやっているだという、既成事実(責任逃れ)をつくるという、本当にお粗末なことが目的だと推測されます。
ただ単に提出書類を増やし、規制項目を増やし、何重にもチェックをしたところで、設計者や審査する側も、”心”がないただ膨大なチェック作業で、正直くたびれてしまうだけです。
私が一番懸念することは、こういったことが、建築という”ものつくりの現場”から、”心”がますます遠のいてしまうことに拍車をかけているという事実です。
その”心”とは、いわゆる職人気質といったり矜持といった”ものつくりの心”です。
いわゆる構造偽造事件では、工事現場に”ものつくりの心”があれば、防げた事件だと思います。
仮に悪意ある設計者が騙そうとして設計上鉄筋を減らしても、建設会社の現場監督、製図工、職人としての鉄筋工、溶接工、工事監理者、建築審査機関など何人ものチェックや、職人の作業を経て建物が出来上がっているので、構造がおかしいことは、”ものつくりの心”があれば、気がつくはずです。
この工事プロセスの中で、誰かがおかしいと主張すれば、訂正の余地はあるはずです。
しかし、これらのだれもが”心”を入れてものをつくっていないので、目の前の作業をするだけなのです。
現代の現場からは、職人気質は減り、職人はただの流れ作業をしているだけという変化を感じています。これはある意味、相当な危険信号だと感じています。
今回のこの改正基準法は、そういった状況を、より助長していくだけのような気がします。
ものつくりにとって、本当に必要な部分にエネルギーが注げる環境を取り戻したいと思います。
さて、話題を変えて。自宅に咲いている金木犀が、甘いほんのりした香りをともなって開花しています。
1,2週間ほどの短い期間ですが、秋を感じさせてくれます。
投稿者 ooto : 2007年10月13日 13:21 ツイート