4.スキップフロアと部屋の関係
 HM邸はスキップフロアの構成です。
スキップフロアとは、手前と奥のスペースが半階ずつずれている、つまりどちらかを1階、2階と数えれば、もう片方は中2階、中3階と数えられるような構成です。

スキップフロアの家は、平面図ではなかなか理解できません。恥ずかしい話ですが、私はいまだにスキップフロアの家は事前に図面を読み込むのをあきらめてしまいます。
頭で考えるものと、実際のものがほとんど合致することがないからです。
HM邸も、あまり本気で図面を見ることなく、その分、実際に自分の目で見るのを楽しみにしていました。
その印象は……。
一言でいうと、予想以上に階段の存在が際立っていました。
この家の階段は単なる移動空間ではありません。
ご主人が「たまに階段に座って本を読んだりする」と仰っていましたが、階段自体が一つの部屋になっていて、心地いいのです。
すぐ脇に中庭があるので家のなかで一番明るい場所とも言えそうです。
 前項でも書きましたが、ゆるい勾配、広い踏み面、そして蹴込みの小さなストリップ階段として視線や光を抜く配慮、など上り下りだけでなく、階段にいること、さらに部屋から見ることなど、さまざまな状況を考えてつくられているのがわかります。
面白かったのが、蹴込み板のエピソード。
当初はスチール階段のわずかな立ち上がりだけで、本当のストリップ階段だったそうですが、ちょうど家ができるときにお子さんが生まれたため、危険防止のために合板で数センチの蹴込み板を付けたのだとか。でもそれが、半階上のお母さんの部屋と子世帯リビングの視線をちょうどいい具合に調整しています。
「偶然です、そこまで考えてなかった」と大戸さんも苦笑いでしたが、前述の階段への数々の工夫・配慮があったから生まれた「偶然」と言えるでしょう。

HM-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP> → <オンライン設計室>→<No.12 HMさんの場合>
を参照ください。 |