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2010年5月17日

3,4階建て住宅の設計術_その1

その1 - 土地は狭いけれど。


最近、狭小地といわれる比較的狭い土地に、住宅を設計する機会が増えてきました。

その建築場所は、台東区、墨田区、中央区、大田区などのいわゆる下町と言われる地域が多い傾向にあります。

土地の広さは、狭いもので10坪を切って9.5坪(約31.5m2)、広くともせいぜい17坪(56.1m2)程度の面積です。

建て主さんは皆口を揃えて、狭いですが何とかなりますか?などと、不安げな心境を語られます。

しかし、こういった地域の多くは、商業地域など、3,4,5階建てなどの中高層建築が可能な場所であり、設計に工夫を施せすれば、十分住みやすく、居心地が良い住宅が建築可能だと考えています。


設計の経験を通して、土地の狭さを克服して、快適な住宅をつくるためには、前提となる大切な認識があるように感じています。

まずここでは、まず手始めとして、都心の狭小地に快適なすまいを実現するためのポイントを述べてみようと思います。

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・下町の商店街(台東区)

■町も人も、すまいの大切な要素だ

下町のすまいとは、建築する『住宅単体』だけでなく、周囲の町や、商店街、近隣の住人、親戚の人々なども、含んだ広がりを持ったイメージだと思います。

だから、住宅自体が多少狭くても、地域や町などに対して、自宅の広がりの延長としての意識を持つことが出来つので、トータルですまいの安心感や居心地の良さを持つことが出来るのだと思います。

一方一般的には、山の手の住宅は、塀で囲い込み、住宅自体が周囲に対して、閉鎖的になっている傾向にあるので、その反動として、住宅自体を広く欲しがる傾向にあると考られないでしょうか。
もちろん、これは傾向であり、どちらが良いか悪いかではなく、その地域を好む建て主の、指向性によるものだと思います。


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・下町の狭小地=敷地面積9.5坪(NO.34_AB-HOUSE台東区)

その結果、下町の狭小地住宅の設計を通して感じることは、ほとんどの建て主がその地域を愛していることを共通に感じます。
例えば、そこに生まれ育ったとか、その地域に親戚が多いとか、近隣には買い物な商店街があるとか様々な特徴があります。

このような場所の地価は、商業地域などの高度利用の場所にあり、当然高価な傾向にあるので、必然的に、狭い敷地が基本です。
しかし、住宅単体としてではなく、町や地域という広がりの中での住環境を考えれば、快適であることが多いのです。


ですから、下町の狭小地の住宅を成功させる秘訣は、ともかく住まい手がその土地を愛しているかどうかに掛かっていると言っても良いと思います。


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・下町の住宅には2世帯、3世帯住宅が多い(NO.20_KI-HOUSE墨田区)


これまでの経験では、下町の住宅は、狭くても、2世帯、3世帯などの大家族住宅が多い傾向にあります。
これも、皆で一緒に住むことが、基本であり、人の広がりも、すまいを豊かにする大切な要素だからでしょう。

ですから、下町の住宅を設計するときは、いろいろな人々が関わってくるので、それは設計者としても、楽しいところでもあります。

狭いと言えば、鴨長明が書いた『方丈記』を思いだします。
建物自体は、4丈四方(約3メートル)広さで、高さが7尺(約2.1メートル)と小さいのですが、周囲の緑や山々、川などもすまいの一部と考えれば、狭くても全く構わないと述べています。

現代においても、狭さ、小ささというのは、考え方次第では、マイナーな要因ではなく、後々詳しく述べていくつもりですが、環境工学的にも、人の距離感においてもいろいろな意味で、ポジティブなことと考えても良いと思います。

次回から、設計の具体的なノウハウなどを公開しています。
ただし、仕事の合間に徐々に書き進めていくつもりですので、1,2週間に一度程度の更新のつもりです。
乞うご期待を。大戸

投稿者 ooto : 2010年5月17日 12:26