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2007年1月26日
建築は伝言ゲームと似ている
クライアントに、建築をつくるプロセスは伝言ゲームに似ていると話すことがあります。
どういうことか簡単に言うと、建築をつくるには、多くの人が介在しているので、きちんと伝えないと、自分の思いとおりに伝わらない、つまりつくれないということです。
何かこうしたいというイメージを、原型を壊さないで具現化するには、人から人への伝言が、きちんと伝わるようにしなければいけません。
例えば、画家や小説家は、自分でアイデアやイメージを考え、自分自身で描き、または書くので、他人を介在しないで自己完結してものつくることが出来ます。
一方建築をつくる場合は、まずはじめは施主が、まずいい家をつくりたいと思い立ち、建築家に設計を依頼し、その考えやイメージを図面化し、工務店に発注します。工務店は、職人を使って工事を行い、はじめて実際の家が建ちます。
以上を考えただけでも、施主から見たら、つくられる最終ランナーの職人まで、多くの人が介在しています。一般には、実際の物作りの現場は、施主の代理人である建築家に任されることが多いのですが、私たち建築家から見ても、最終の職人までこちらの意図を正確に伝えることは、なかなか難しい。
そこで、建築家は先回りして、最終的に工事を行う職人と話し合う機会を多くつくり、そのために何度も現場に足を運びます。これが、いわゆる現場監理の仕事の重要な部分だと言っても過言ではありません。
建築には何重にも人が介在してという点で、先日おもしろいことを体験しました。
現在工事中の現場で、屋根工事に関して起こった現実の話です。
工期の関係でどうしても、屋根工事を早くしてして欲しいと工務店に言うと、その下の板金屋が、その下の屋根材料屋に材料が納入されないからだめだと言っていると。その屋根材料屋は、問屋云々・・・というようにどんどん下流に行ってしまいます。
もう工務店から話を聞いていると面倒なので、私が一つ一つさかのぼって電話をしてみると、2つくらい下流の下請け会社にいくと、もう発注元の工務店の名前は分からないので答えられないと言われました。その件については、もうそれ以上追跡するのはもうあきらめました。
屋根をつくるにも、何重の会社、人を介してはじめて出来ます。
建築は、こんな部品の集積で出来ているので、情報伝達をきちんと行い、思い通りのものをつくっていくためには、きちんとした情報を流すこと、つまり正確でわかりやすい図面を書くことが、基本中の基本であることは言うまでもありません。ただし、実際には図面だけでは伝わらないこともあるので、いろいろな手段を使って、伝えていくしかありません。伝言ゲームで、次の人に正確に情報を伝えていくには、分かりやすく正確な言葉を使う必要があるように、建築にも正確な情報伝達が必要だという話でした。
投稿者 ooto : 2007年1月26日 21:06 ツイート