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2006年4月 5日
最近の確認申請事情
昨年の構造計算偽造事件、東横イン事件など相次いだ建築関連事件を受けて、建築確認申請の事情が大きく変化していることを実感しています。
そもそも建築確認とは、その名の通り、建築する際に、法律に準拠しているか確認する手続きです。
そしてその申請機関は、以前から窓口だった自治体だけでなく、全国100以上の民間機関で可能となっています。
それでは、何を確認するかというと、大きく分けると以下の通りです。
1,意匠担当による高さや面積制限のチェック(集団規定と言います)、そして窓の大きさや階段の形状、防火や避難などについてのチェック(単体規定と言います)を行います。
2,構造担当により、地震や台風などの自然災害に対して、一定基準以上の強度を保証できるかチェックを行います。
構造計算偽造事件は、ここのチェックに属します。
3,その他規模により、その他部署や消防署などのチェックを受けます。
最終的には、各申請機関に決裁権を持つ、『建築主事』と呼ばれる公的な資格者の判断で合否が決まります。
ところで、関連法規を含め建築基準法は、辞書の厚みくらいある大部の法律大系です。そしてそこには民法と同じように、判断に幅が出てくるいわゆるグレーゾーンが多く存在します。
その判断は、多くの場合、主事により黒になったり、白になったりするので、申請側としては非常に悩まされます。
この判断が、近年の事件を受けて、とても厳しい側、つまりグレー=黒というケースが非常に増えてきたことは、多くの場合申請者、つまりクライアントにとって不利に働くことが多くなってきたと実感します。
例の構造計算などの問題は、実際には『偽造』事件なので、白か黒かなどという問題ではなく、正しいか否かの問題なので異なった次元の問題なのです。
ところが、その後の各主事の対応は、前述の通り守りの姿勢だけが目立ちます。
実例を上げて説明すると分かりやすいので、ここでは小屋裏空間へのはしごの問題を取り上げます。
建築基準法では、政府の規制緩和の考えを受けて、小屋裏空間の利用を可能としています。
より有効にスペースを活用しようという流れで可能になってきたことです。
ところが、この小屋裏空間へ登るためのはしごが、自治体毎,、つまり建築主事という個人に判断が異なるのです。
現在事務所では60歳代のご夫婦の住宅を設計しています。
2階建てで、小屋裏空間を持つのですが、建設地のA区は、可動式のはしごでなければ、いけないという判断なのです。
実は平行して設計している東京都B区は、固定階段でも良いという判断なのです。
両区のこの判断の差は、老人の昇降に対しての安全性に対して大きな違いが生じます。
お年寄りに対して、不安定なはしごでなければ許可しないという判断は、かなり無責任な判断だと感じられます。
安全性を踏まえ、固定階段が良いという自治体は多いのですが、まだA区のように絶対に認めないという自治体は、実数はつかめないのですが、半数程度あるようです。
隣接する区において、隣はOK、こちらは駄目というのは、いかがなものでしょうか?
建て主の立場に立てば、これほど不可解なことはないでしょう。
一般的には、駄目という自治体、つまり『建築主事』は性悪説、良しと判断する場合は性善説の前提で、判断していると思われます。
もっと厄介なのは、建築主事が異動で変わると、判断がまた変わるというようなことが多くあるのです。
最近は、このような判断が迫られるときは、多くの場合NOという方向に傾いているように感じられます。これらのこと何とかならないかと、いつも心の中で嘆いています。
投稿者 ooto : 2006年4月 5日 10:58 ツイート