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オンライン設計室

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NO.67HU2-PROJECTができるまで

22:【住んでみて】レポート 市川隆

(2023.03.15)

01で、T家の土地建物の状況と、新たに建てたHU-PROJECT1の様子をお伝えしたが、今回は02として、そのプロジェクトの裏側の敷地にあった倉庫のリノベーションについて見てみよう。

倉庫を住宅にリノベーション?HU-PROJECT2 かつて倉庫として使用していた鉄骨造のこの建物は、Tさん家族の自宅にリノベーションされた。
実はこの計画も、最初から予定されていたものではなく、足元の店舗兼住宅(HU-PROJECT1)の工事が進む中でTさんが大戸さんに相談して始まったものだという。

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もともと倉庫だったから、人が長時間いられるような仕様にはなっていない。
住人が日常的に過ごせるように改修するには耐震補強や断熱工事にコストがかなりかかる。
工事の大変さはオンライン設計室を参照してほしいが、それでもプロジェクトが進められたのは、「自分たちが住まなくなっても人に貸すことができる」というTさんなりの深謀遠慮がここでも働いている。

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3層の建物は中間階の2層部分で前面道路と接するが、純粋な住居スペースは2層と3層のみ。
1層部分は上階とは完全に切り離して、別に家の脇からアクセスできるようになっている。
つまり、もしも住居部分を誰かに貸したとしても、1層部分は変わらずに使うことができるのだ。

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ちなみにこの1層部分は、オンライン設計室で自主施工していたところ。
用途は未定で、Tさんご家族が少しずつ手を入れて使えるように整えていく予定だという。

計画を進めながら考え、様子を見ながら少しずつ決めていく。
そんな手堅さが垣間見えると同時に、「夢のマイホーム」的な思考ではないことがここからもわかるだろう。

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もちろんそれは、Tさんが家族の暮らしを蔑ろにしているという意味ではない。
「夢のマイホーム」が家を建てること、そこで暮らすことを目的とするのであれば、Tさんはもっともっと先まで見ているということだ。
引き継ぎ、続けるための受け皿とは 多くの人にとって「自宅を建てる」というのは一生を賭けた大きな決断だ。

それは人生のなかで一番高い買い物だからだろう。
でも「よし、建てよう」と決断するには、将来にわたって経済的な見通しがなければならない。
シャッター通りが問題視されるようになった数十年前から今に至るも、これから先の商売をどうするか、持てる建物を残すべきか、古い時代の曖昧な所有関係をいかに整理すべきか、悩んでいる人はきっと全国にたくさんいる。

行政側は補助金という経営的な応援はしてくれるのかもしれないし、街づくり的なテコ入れもあるだろう。
だが、土地や建物まで含めて経営的なアドバイスをしてくれる窓口は少なく、そこに差し伸べられる手は限られているように思える。
なぜなら、建築にも経営にも不動産にも精通しているような専門家は極めて少ないからだ。 であれば、それぞれの分野の専門家の力を借りるしかない。

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Tさんは、お店を継いで商店街の活動などにも加わり、商売上のさまざまな知見とともに人脈も得たという。 そして一口に補助金と言っても、メリットのあるものもあれば、いずれ自分の首を絞めそうなものもあることがわかったそうだ。
こういう、多分野の人たちの協力を得るとき、大事なのはリスペクトしすぎないこと。
素直に専門家の意見に耳を傾けることは当然だが、盲従するのではなく決めるのは自分だという覚悟と、それでいて思い込みの独善に陥らないバランス感覚が求められる。
専門家側もクライアントの決断に柔軟に対応してくれる人でないとうまくいかない。

現在、花う本店の建物でもリノベーションの計画が進む。
花のサブスクや新店舗(HU-PROJECT1の店舗)でのソープフラワーなど、お店の営業についても多岐にわたってチャレンジ中。
大戸さんも含めて多分野の専門家の協力を得ながら、Tさんの未来への挑戦が続いている。 03でさらに次の報告ができるかどうか、乞うご期待。