その1-はじめてメールをいただく

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要約:はじめてのメール交換から

[2002/10]はじめまして




大戸さま

はじめまして。○○区のMAと申します。
35歳会社員です。

「インターネットで家が建った」で大戸さんのことを知り
以後「オンラインを設計室」を興味深く拝見させていただいてます。



本日は教えて欲しいことがありメールしました。長文失礼します。

私ども(妻+子1)も家を建てるべくいろいろ情報収集・勉強しているところです。
現在○○区を中心に、土地を探しはじめていますが、土地選びの段階から力に
なってもらえる建築家の方を、予め(早い段階から)見つけておきたいと思っております。


建築家の方と家を建てたいと思った理由は2つあります。

 ・自分たちの価値観や生活イメージをうまく汲み取り(引出し)形にしてほしい⇒設計
 ・自分たちと工務店との間の調整を上手くやってほしい⇒監理


前者への期待ももちろん大きいのですが、実は周囲でも欠陥住宅やハウスメーカーに食い物にされた
若い施主(とボクが呼んでるだけですが)がいたりして、施工部分にかなりナーバスになってます。
「オンライン設計室」では、職人さんの顔が出てきているのが、すごくいいなあと思ってます。
大戸さんはきっとよい関係を築いているのだろうなあと感じます。そこへの期待も大きいです。

前置きながくなりました。
以下、大戸さんにご質問したい点です。
お答えいただける範囲で教えていただけると助かります。

「監理について」
●大戸さんは、いくつかなじみの工務店(現場監督)をお持ちで、その中から選んでいくのですか?
 それとも、敢えてその都度、土地の近隣エリアの工務店にお声がけする感じですか?
●仮に○○区周辺で建てることに成った場合、その近辺で安心できる工務店をご存知ですか?
●現場の職人さんとの付き合い方をどのように考えていますか?
 また、特に意識や留意していることはありますか?

「狭小・ローコストについて」
現在の資金計画からして、狭い土地(20〜25坪)でのローコスト住宅と考えています。
イメージでいうと、土地*,000万、家*,000万、+諸費用。
●大戸さんは、これに近い条件の設計をされたことはありますでしょうか?
●狭小・ローコスト住宅を建てるに当たって、何を意識(重視)すればよいでしょうか?

「土地探しについて」
●これまでの経験から、土地を選ぶ上でのアドバイス的なものはありますか?

以上、一部不躾な質問ですいません。
質問自体もまだうまく整理できていないようでお恥ずかしいのですが、
答えていただける範囲で結構です。ご教示くださいませ。

よろしくお願い致します。

MA

ma@*****.co.jp(会社)
ma@*****.ne.jp(自宅)
※自宅にもCCでお願いします。

 


  [2002/10]RE:はじめまして



こんにちは、MAさん。建築計画網・大系舎の大戸です。

この度は、メールいただきありがとうございました。
また、本を読んでいただいたとのこと、有り難うございます。



建築の世界も、この数年で情報化社会の大きな波が押し寄せています。
『インターネットで家が建った』は、もう数年前の出来事ですが、情報化社会の波の中で
どのように、住宅づくりが変化するかの実体験をレポートしたものです。
最近でも基本スタンスは、変わりませんが、情報通信技術などのデジタルネットワークは
、進化し続けているので、いろいろなバリエーションが生まれています。
その一方で、住宅など”もの”をつくるという、基本的な行為は、古来から不変であると
思いますので、そのことも重視しています。

結局、温故知新の考え方で、両者のバランスをとることが大切だと感じています。



さて、それではご質問へのお返事です。

>「監理について」
>●大戸さんは、いくつかなじみの工務店(現場監督)をお持ちで、その中から選んでい
くのですか?
> それとも、敢えてその都度、土地の近隣エリアの工務店にお声がけする感じですか?


☆私の方法は、ご質問の両者を合わせたような方法で工務店選びをしています。
ふつう、3、4社程度を選び、相見積もりを取ります。
2,3社は、これまで実績のある工務店を入れ、1,2社は新しい工務店に入ってもらう
ことが多いです。

都内では、これまで私と実績のある工務店が、何社かあります。そこから、2,3社を選
びます。
普通都内であれば工務店はほぼどこでも対応しますし、アフターメンテも問題ありません。
ですから、全く見知らぬ土地(例えば、群馬や栃木など)であれば、全く新しい工務店に
御願いするしかありませんが、建設地が都内(大体23区、周辺地域など)であれば都内
の業者=地元という意識で工務店を選んでいます。
もちろんそれらの工務店と、私の事務所とは業務上の利害関係は全くありません。

現代は、以前のように『私の町の工務店』という意味は薄れて来たと思います。都内の工
務店の活動エリア、周辺県などを含み結構広いものです。

また、常に新しい風を入れたいので、あえて新しい工務店を1,2社選んでいます。新し
い工務店は、友人の建築家に紹介してもらったり、施主の紹介であったり、評判を聞いて
など理由は、いろいろです。新しい工務店の技術力は、提出していただく見積書の内容で
も、技術内容のかなりの部分が分かります。

見積もりの基本は大体以上のようですが、時折特命=1社限定というかたちもとります。
特に厳しい条件や、難しい条件の時は、相見積もりより、有効な時があります。もうあな
たに頼むしかないというような頼み方です。職人気質を刺激するようなやり方です。
この方法も時々使います。


>●仮に○○周辺で建てることに成った場合、その近辺で安心できる工務店をご存知です
か?

☆○○区内の工務店にはなぜか縁がないのですが、近隣のエリアには信頼のおける工務店
は数社あります。


>●現場の職人さんとの付き合い方をどのように考えていますか?
> また、特に意識や留意していることはありますか?


☆工事発注先は工務店になるので、まずは工務店の監督に理解をしてもらうように努力し
ます。

そしてその下で働いている職人さんには、自分の力を最大限出してもらえるような現場に
したいと考えています。誰がつくったか分からないような匿名の現場ではなく、つくった
職人が分かり、名が残るような現場にしたいと思っています。職人にやる気がおこれば、
緊張感があり、張り合いがあり、楽しいものつくりの場になると思います。職人が、自分
のつくった家と、自慢できるようになればしめたもの。

  


工業化住宅(住宅メーカーなど)などは、職人を機械として扱うようなシステムです。職
人を人として、考えることは、大切なことだと感じています。


>「狭小・ローコストについて」
>現在の資金計画からして、狭い土地(20〜25坪)でのローコスト住宅と考えています。
>イメージでいうと、土地*,000万、家*,000万、+諸費用。
>●大戸さんは、これに近い条件の設計をされたことはありますでしょうか?


☆土地、建物を購入される方は、大体この位のコスト配分が多いですね。
ですから、もちろん経験があります。
特に多い建築費の価格帯は、2,000万円〜3,000万円といったところです。


>●狭小・ローコスト住宅を建てるに当たって、何を意識(重視)すればよいでしょうか


☆月並みかもしれませんが、80%の精神が大切だと思います。
普通、住宅をつくるとこれもあれもなってしまいがちです。特に設備類は、重装備になり
がちです。建築後に、結局使わなかった設備などは結構出るものです。
そう考えると、ちょっと少ない位(=80%の精神)が丁度良い目安です。ただし、全く
削るのではなく、将来設置できる可能性などを残すようにします。
つまり、将来を見据えて、80%レベルで止めておくような考え方です。
ただし、基本部分は良いものとします。(構造体の耐震性・住宅基本性能など)

”80%”のコストと言うより、気持ちの問題だと思って下さい。
これもあれもではなく、テーマは絞り込んで、設計すると良いと思います。


>「土地探しについて」
>●これまでの経験から、土地を選ぶ上でのアドバイス的なものはありますか?

☆不動産業界の仕組みで、公開されたものは、どこからでも検索できます。
だから公開される前の物件を抱えている、○○周辺に強い不動産屋に声を掛けておくこと
でしょうか。

それから、建築条件付の土地は、土地代の数%必要ですが、交渉次第で条件をはずすこと
が出来る場合もあります。もし建築条件付で、気に入ったものがあれば、不動産屋を通し
て相談することも場合によっては可能なことがあります。

それから土地には、掘り出しものはあまり無いと言うこと。一般論では、良い条件の土地
は高いのが一般的です。

ただし、変形敷地などは、設計次第で活用できることもあるのでご相談下さい。

土地は、縁のような要素もありますね。(こんなこと言っても仕方ないですが(笑))
縁が無いと、なかなか決まりませんが、流れにのると、ポンポンと進むようです。

取りあえずのお返事は以上です。
もし気に入った土地などあれば、事前にお話いただければ、調査も可能です。
また分からないよなことがあれば、お気軽にご相談下さい。

今後ともよろしく御願い致します。

***** 建築計画網・大系舎 http://www.taikeisha.net *****
***** Hiroshi Ooto<ooto@taikeisha.net> *****

 



[2002/10]ありがとうございます。それと



大戸さま
金曜日にメールしたMAです。
早々に、またご丁寧なメールありがとうございました。

『インターネットで家が建った』を最初手にとったときには、
インターネットで家が建つもんかなあ、という半ば興味本位でありました。
しかし、読んで行くにつれ、家を建てていく作業というのはコミュニケーションの
積み重ねであることに、気付かせていただきました。
単なるOneWayの、発注→受注、もしくはプロ建築家→素人施主的な世界ではなく。
ボクの家づくりの当初のイメージはこれでしたので、新鮮でした。
だからこそ、コミュニケーション(人と人の結びつき)構造を変えたインターネット
との相性がいいのでしょうね。

オンライン設計室は、非常に興味深い取り組みだと思ってます。
単純に「作品」を並べただけでない(これも充分意味あることと思いますが)、
家づくりの過程も含めた「どのように家が建ったのか」が伝わるので、
楽しいですし、勉強になります。
大戸さんにとっては、手間・コストのかかることかと思いますが、
それ以上の効果(という言い方が適切かどうかはありますが)がある取り組みですね。
家を建てたい予備軍にとっては貴重な情報です。

工務店について。
安心しました。
当方では、まったくなんの伝もないので、ここは建築家の方にお願いしたい部分でした。
いい意味でなじみがある(なれあいではなく)のがいいのではと思ってましたが、
新しいところでも、見積段階で、力量等が測れるのであれば、そのときの判断ですね。

ローコストについて。
80%の気持ちとの意見、なるほどなと思いました。
含みを残しておくという考え方は、してませんでした。

実は、妻と違って、私はつい最近まで一生賃貸でと考えていました。
その時々のライスサイクル・事情に合わせることができる可変性が
いいなあと思ってましたので。
(性格的に、計画的というよりは、局面ごとにベストと思う選択をして進んでいくという感じなので…)
逆に家をつくる→一生固定→将来を見据えて120%の装備、という
脅迫観念がありましたから、80%という観点は重要ですね。
家を契機に、いろいろ考えるようになりました。

土地について。
この週末も見てきましたが、なかなか難しいですね。
コストが折り合っても、なんかしっくりこないという感じもあったりで、
まさしく縁ですね。きっと。

というまだまだ土地を探している最中なのですが、
一度、大戸さんの事務所にお邪魔することは可能でしょうか。
当方も、かっことしたイメージがあるわけではないのですが、
大戸さんの創られた家の中で、我々の条件に近そうなものなどを
いろいろ紹介していただければとおもったりしてます。
(現段階で、これをききたいというような明確なものはないですが、
お会いして話しができれば、という感じです)

最初は私だけでと思ってますので、平日昼でも大丈夫です。
比較的自由な部署にいますので、時間の都合さえつけばお伺いできます。
もし可能であれば、大戸さんの都合のつく時間を、2,3いただければと思います。
今週、来週、再来週ぐらいで調整できればと思ってます。

不躾で恐縮ですがよろしくご検討ください。

MA

 




その1おわり

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