空間の蘇生術 建築計画網・大系舎 大戸 浩 最近は、色々な種類の建物の改修工事の設計を多く手がけるようになってきた。 改修工事は、新築の設計と比較して、依頼主の建に対する問題意識や要望が明確なので、 施主とのコミュニケーションが取り易い。また、問題がある建物が、設計によって再び息 を吹き返した時の喜びは、新築の設計とは一味違った味わいがある。 写真の建物は、8年程前に、私が在籍していた事務所(大野建築アトリエ)で設計を担 当したものである。そのような縁があって、今回の改修工事の設計は、私の事務所が担当 することになった。この建物は、主に海外からの帰国子女の生活する学生の寄宿舎である。 建物は、ある程度年数が経つと、当初の計画段階で想定できなかった使われかたや、新たな 要望事項が発生してくるものである。 今回の改修工事では、中庭周りのデザインを充実させ、学生たちが集まったり、学べるよ うな空間をつくることを要望された。それまで中庭は人工芝が敷かれただけの比較的無機的 な空間であった. 今回の設計では中庭にプールや、東屋(屋外教室)を設け、また西側の外壁は、日除けの 木製ルーバーをつくり、冷たいコンクリートの壁面に変化を持たせた。デッキやルーバーに は、アメリカから直輸入したレッドウッドが、大量に使われた。 フローの時代から、ストックの時代になってきたと言われるが、今後このような形の改修 設計が増えていくと思われる。私は、このような改修のデザイン技術を、空間の蘇生術と呼 んでいる。空間の蘇生とは、今までの空間を、新しく、全く異なった姿で蘇らせることであ る。空間の蘇生術によって、時間が経過した建物が、新しい姿で活き活きとした姿で、蘇っ たときは本当に嬉しいものである。 |
改修前
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![]() ![]() 蘇生後(外部) |