KI-HOUSEの環境的な条件は、4つの大きなポイントがあります。
1つ目は、この地域は相撲部屋で有名であり、人情が篤い下町であること。
2つ目は、高密度の商業地域であること。
3つ目は、南側は、大きな水路が流れているのですが、同時に上部に高速道路が走っていること。
そして4つ目は、地盤が非常に悪いということです。
1,下町であること。
敷地の近所には、相撲部屋がいくつもあり、力士の姿をよく見かけます。商店街を歩いてても、相撲の町を感じさせるちゃんこ鍋屋さんなどをよく見かけます。また、赤穂浪士討ち入りで有名な吉良の屋敷跡、勝海舟の生家などがあり、歴史を感じさせてくれます。
また、公園には子供達が多く遊んでおり、おそらく大人の目が行き届いている仕組みがあるのでしょう。
KIさんのお宅に伺っていると、多くの人の出入りがあるのを感じます。古くからお住いで、多くのおつき合いがあるのでしょう。

またKIさんご家族は、創価学会の会員であり、地区の集会所にもなっているそうです。そういう意味で、一般的な住宅で必要である居室の構成とは、少し異なった計画になりそうです。つまり、何LDKといったタイプとは異なった計画にありそうです。
KIさんは、以前には、この場所を変えた住み替えも検討したそうですが、この場所に住み続ける決意をしたのは、下町の人のつながりがあるこの場所の良さを実感してるからであると想像しています。
2,高密度の商業地域
この地域は、高密度の商業地域(80/400)であり、周囲は中層ビルや、マンションが建ち並びます。しかし、住宅である限り、高くとも3階建てが妥当です。建築基準法を考えても、4階建て以上にあると防火区画などの必要が出てくるので、3階建てが妥当だと考えられます。
また高層化した分、1階はほとんどが駐車場であり、夜間の治安があまり良くないとのことです。
3,水路と高速道路の、長所と短所。
南側は、竪川という隅田川の支流に、面しています。対岸まで視線を妨げるものはないのです、良好な眺望が得られます。

対岸よりの眺め
しかし、目を上部に移すとそこには、首都高速道路が走っており、実際には冬の日照は期待できません。
そして大きなポイントは、首都高速道路からの車の騒音です。道路面は、ほぼビルの6,7階の高さにあります。現状の建物は、2階建てであるので、高さが上がれば騒音のレベルもあがります。ですから、騒音をなるべく押さえて、なおかつコストを上げない工法の選択が必要になってきます。

上部からの眺め
また水路の管理が曖昧で、船舶が無法地帯のように係留されています。ですから、どの住宅も水路側には、窓を設けず閉じており、それが一層治安の悪さを助長しているような気がします。

敷地側から水路への視線
南に面する水路側の長所と短所を、上手くバランスをとって建物を計画する必要があると感じています。
4,地盤が悪い。
この地域の地盤が、非常に悪いことが、隣地のボーリングデーターを区役所で閲覧して分かりました。そのデーターを見ると、30数メートル先の支持層まで、地耐力がほぼゼロの状態が続きます。

ボーリングデーター
今回は、3階建ての鉄骨造で計画が進められる予定です。建築的には、非常に軽い重量の建物です。それに対して、どのような基礎設計にあるかが焦点になりました。
このプロジェクトで、構造設計には、構造設計工房デルタの久田さんの協力お願いしました。久田さんと相談した結果、いろいろな選択肢があるが、地中には液状化の可能性がある地盤も見られるので、杭の先端が支持層まで届く、いわゆる支持杭を使うことで計画を進めることをKIさんに提案するようにしました。
建物の規模から考えて、30数メートルの長さが必要で、非常に高額な杭工事費が掛かりますが、安全を優先させることが重要だと考えたからです。

久田氏
今回は、久田さんにも、KIさんとの打ち合わせに参加してもらい、その重要性について説明をしていただきました。いわゆる、医療で言うインフォームドコンセントであり、地盤工学の難しい話でも、なるべく易しく、分かるように説明していただきました。
一般には、構造設計は、高度の専門知識が必要なので、構造設計者の方が、クライアントに対して直接説明をすることは、少ないのですが、今後はこういったように、専門家からの直接的な対話が必要であると考えています。
大家族なので、打ち合わせは、いつも人が多い。