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NO.41_TH-HOUSEができるまで

Vol.35:老後の家・再考

(2012/05/08)

今回のTH-HOUSEのプロジェクトを通して、老後の家について、いろいろと考えさせられました。

これまで老後の家というと、車いすのことや、段差のこと、ホームエレベーターのことなど、老人は、全てハンディーを背負った人というイメージで考えられた家であると考えることが多いと思います。

しかし人間は、老いて病気をするのは当然ですが、しかしだからといって全ての人が車いすの生活をしているわけではなく、元気に健常者として生活されている老人はとても多いでしょう。

老後の家は、老人に優しい家であることは当然ですが、だからといって健常の老人の場合は、病院のようなつくりの住宅では、老後を楽しく生活出来きないのは当然です。

ここでは今回の老後の家づくりを体験して、私たちが気づいた、老後の家のあり方について再考してしてみます。



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一、老後の家 ≠ バリアフリーの家

老後の家と言えば、段差を無くす、どの床面もフラットにするということが叫ばれます。しかし、今回のTH-HOUSEさんの場合は、全く逆のことを希望されました。

家の中のバリアを無くしても、一歩外に出れば、いわゆる段差はそこら中にあり、家でバリアフリーに慣れてしまうと、外に出たときに逆に危険だから、室内で特に段差を無くすことは考えなくても良いということでした。

現在夫婦は元気であり、1階にリビング系、2階に寝室で、階段を使った生活の設計です。こういった逆の考え方は、非常に理解が出来ます。
だからといって何でも良いと言うわけではなく、階段は登りやすく、かつ中途半端な危険な段差はつくらないという考えで設計しています。

但し、老化による身体機能の低下で照明器具やスイッチ類への配慮や、建具の開閉のし易さへの配慮、その他手摺りや腰掛けなどの細部の設計は当然のことという前提です。



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一、老後の家 ≠ 二人用住宅


老後の家は、老人夫妻が住むだけだから、小さなコンパクトな住まいが良いと言われています。だから住まいは、老人二人が住める広さがあれば十分であるという考え方があります。

しかし、視点を変えて考えると、老後の家が2,30年程度住んで、それでお役ご免で取り壊されるということで、良いのでしょうか?世代が変わりあとに取り残された住宅は、老人しか住むことが出来ない特殊な家で良いのでしょうか?

確かに広すぎる住宅は、メンテナンスが大変ですし、少々寂しさを感じるかもしれません。
しかし住宅の寿命は100年以上あるのに反して、人間の寿命自体はより長いのです。そう考えると、人間の寿命より短い、サイクルの家をつくることは、無駄をつくることになるのではないかと考えられます。

今回のTH-HOUSEは、次の住まい手は、誰が住むか分かりませんが4人家族程度が住める広さを確保しています。広さとしては、2人住まいでは、少し広いのですが、長く人間に住んでもらうということを想定して、広さを決めています。

資源の無駄遣いをしないという大きな視点に立てば、この考え方はエコにつながるでしょう。
住宅とは、個人の持ち物には違いありませんが、長い時間で考えれば、共有物であると思います。
また経済的な観点からも、その方が将来、高い資産価値として残っていくでしょう。


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一、老後の家 ≠ 終の棲家のイメージ →楽の住処

老後の家には、終の棲家というイメージが付きまといます。
まさに暗い、終わりへと向かう希望がない生活を過ごす家、というイメージがあります。

この終の棲家というイメージには、楽しく、のんびりと暮らすという視点が欠けています。若い子育てのための家は、子育てをすることが中心に設計が行われますが、老後の家は、自分たちが生活を楽しむことが目的につくられるべきです。

老後の家こそ、明るく、楽しい、住宅をイメージして、設計することが大切だと思います。
老後とは、新しい生活へのスタートであると考えると、住宅に対するイメージは、もっと豊かになるのだと感じています。

私は、老後の家を「終の棲家」という呼び名を付けることに抵抗感があり、あえて「楽の住処」と呼んでいます。

楽とは、楽しく、かつ楽に暮らせるという意味でつかっています。



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