住んでから少し時間が経過した住宅の様子を
レポーターの市川さんを通して表現しています

大田区の下町地区に建つ、2世帯住宅です。耐火性の高いRC構造3階建てです。
-Vol.8-
2世帯・RC構造の家
- TD-house -
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■設計者の視点(by 大戸)


まず始めに、【結露】についての誤解がないように、説明しておきます。
RC構造は、打設後1、2年間は、余剰水が出ます。これは、コンクリートとは、水と石灰が反応してできるのですが、内部において化学反応せずに残った水が、徐々に長期間にわたって出てくるからです。
また外断熱にしてあるので、余剰水は外部に出ることが出きず、内部側にでてくるから結露として現れているのだと思います。ただし、3年程度で、内部の余剰水は出きってしまいます。
その後は、結露の問題は出ないようなので、入居初期の問題であったと思います。


TD邸の市川さんのレポートには、竣工後の設計者と施主の関係についての重要な問題提起があります。

1年点検が終わると、その後の維持管理は全て建て主の手に委ねられます。

その後、何か手に余る問題が無い限り、施主から連絡を受けることはほとんどありません。

しかしよく考えると、維持管理を全て建て主に委ねてしまうことが、住宅にとって本当に良いことでしょうか?


例えば、自動車には車検という制度で、2,3年ごとに根本的な点検が行われます。

問題があれば、車検に通らないので、そこでは修理が行われます。


また定期整備として6ヶ月ごとに様子をみてもらいながら、長く安全に使っていくという体制が自動車には整っています。



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しかし住宅にはそういった制度がないので、建て主からは、何か問題があってはじめて、連絡をもらいますが、実はその時では手遅れになっていることもあります。



例えば、外壁の塗り替えにしても、塗り替え時期の判断は、重要で専門的な判断が必要です。

しかし現実には、施主が何か不具合に気がついた時では、すでに遅かったり、また設計者から見ると全く塗装には問題がないのに、リフォームの営業に押されたり、塗り替え推奨の期間過ぎたという理由で、施主が大金を掛けて塗り替えをおこなっている例も時々見かけます。


しかし、もし1年に1回程度定期的に設計者が、住宅を専門的な視点で見守っていけば、リフォーム工事は、その家にあった合理的な判断で行うことが出来るでしょう。

また一方設計者からみれば、今後に活かせることが出来る重要な情報を得ることも出来ます。

住宅は、材料や工法などのハードの条件と、各家族の住まい方や、その住宅の置かれた環境条件などの、条件の差によって個別性が強く、住宅毎に、専門的な維持管理の判断が大切になると思います。


今後は、このようの家を維持していくまでを、ボランティアーではなく、設計者の仕事として位置づけていく、ポジティブなシステムの確立について考えていこうと思いました。

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