住んでから少し時間が経過した住宅の様子を
レポーターの市川さんを通して表現しています

横浜郊外の、住宅地に建つ木造2階建て住宅です。土地探しからはじめました。
-Vol.6-
シンプルな家
- KN-house -
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6.シンプルとはなにか

 

  KN邸につけられたタイトルは「シンプルな家」。そこで改めて「シンプル」とは何かを考えてみました。

 個人的に「シンプルな家」といわれると、「機能性に徹した」とか「装飾性を排除した」とか、わりとすっきりざっくりのイメージをもっていました。内装仕上げのない合板むき出しの家とか凹凸のない真っ白な部屋とか……。でも大戸さんのいう「シンプル」は、そういう見かけのことではないようです。
 その意味するところは、ずばり「必要最小限」。
 おそらく、計画を進めていく過程で要望を絞り込み、暮らしに必要なものを突き詰めたという意味で「シンプルな家」と表現したのだと思います。

 KNさんに「こうしておけばよかった、とか後悔しているところはありませんか」とうかがったところ、しばらく考えて「設計の過程であきらめたものはいっぱいありましたけど、今は身の丈に合った家だと思っているし、特に思いつきません」との答え。奥さんも「今はここがウチだという思いが強いし、住みやすいです」と笑顔を見せてくれました。
 お二人にとってこの質問は、生まれてきた子供を抱いているときに「ホントはどんな子がほしかったんですか?」と聞いたに等しかったのかもしれません。いいも悪いもなく「大好き」、そんな子供のような存在が「家」なのでしょう。そこには「自分たちがつくった」という、誇りさえ感じられました。

 車のなかで、「なぜかこの家は、ほかのお客さんにも人気があるんですよ」と大戸さんはちょっと不思議そうに口にしました。大戸さんにしてみれば、吹抜けなどの「見せ場」もない、「必要最小限」の家がなぜ好まれるのか不思議なのかもしれません。でも人気があるのは、「身の丈に合った、誇りをもてる家」を望む人がたくさんいるということです。

 

 「最高の空間を用意したい」という建築家の思いとは別に、家を建てたいという人たちのニーズ、「自分たちの家」についての思いが、そこに垣間見られるように思うのです。
(文:市川隆)

KN-HOUSEの出来上がるプロセスは、
<建築計画網・大系舎 HP><オンライン設計室><"シンプルな住宅"No.25 KN-house>
を参照ください。  

 

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