情報の広がりについて
建築知識2002/10号に執筆

当事務所ではじめて、BBSを利用した、住宅のプロジェクトが昨年横浜で完成した。
このプロジェクトを通して感じた、BBSの使い勝手を述べてみる。

施主のTNさんご夫妻には、このBBSは大変好評だった。ご主人は、工事中良く掲示板を通して、現場を見ていていただいたので、常にコラボレートしている気分だったようだ。タイミングを見計らっては、現場に足を運んでいた。また工事の初期段階では、奥さんが出産で、愛知県に里帰りしていた。奥さんは、時々BBSを通じて、工事の進行を見ていたとのこと。また、一般に公開されたホームページ上の工事進行の情報(オンライン設計室)は、三重県のご主人のご両親、ご兄弟、ご友人にも伝えられていて、家族や友人との交流にも役だっていたようである。場所や時間に左右されないインターネットならでは、利点である。

工事担当の、東海建物には、大変協力していただいた。週間工程の書き込み、施主の質問への解答などをまめに行っていただいた。BBSでは、主に現場担当の木賊川さんにこまめに書き込んでいただいた。

建築家が、設計監理を行う場合は、建築家が施主の代理者となるので、施主と工務店は、直接十分なコミュニケーションを行うことは比較的少ない。むしろコミュニケーションの内容によっては、現場に混乱をもたらすことが多い。そのような意味でも、BBS上で行われる少し距離を置いたコミュニケーションが現場には良いと思う。

欲を言えば、職人の家族などにも見てもらいたかった。今後はコミュニケーションの広がりに期待したい。(他のプロジェクトの現場で、職人の家族が仕事ぶりを見たという報告がある。)

最後に設計者として。このBBSの仕組みを使うと、工事監理も容易に、かつ早く施主に伝えらる点は、非常に便利だと思う。ただし、3者の各自が、お互いの役割分担をきちんと把握しないと、この仕組みは上手く機能しない。そのバランスを取るナビゲーターとしての、役割は非常に重要である。今後は建築家として、製図を通した”もの”をデザインすることと同様に、ものではない”プロセス”をデザインすることが、設計者の重要な仕事になると思う。建築家の舵取り一つで、BBSが全く機能しない仕組みになってしまう可能性があるので注意したい。