6,メーリングリストについて
メーリング・リストとは、電子メールを使って可能になった新しいコミュニケーションの方法です。
簡単に言えば、同じ目的を持ったメンバーが集まった、ヴァーチャルな会議室です。会議室に向けた一人の発言が、同時にメンバーにも送られます。ただし、実際の会議と異なるのは、電子メールを使いますので、メンバーが現実の会議室に集合しなくても良いと言う点です。そして、集合時間にも拘束されない点です。
こういった、メーリングリストによるコミュニケーションは、実際に体験しないとわかりにくいものかも知れません。メーリングリストは、あるテーマを持ったサークル的な活動にもよく使われているようですので、どこか参加してみると良いかしれません。
さて、私はメーリングリストを使った家づくりのプロジェクトを通して、新しいコミュニケーションの可能性を感じています。しかし一方で、その使い方によっては、家づくりの現場に混乱を招く恐れも同時に感じています。
私は、幸運にもクライアントのご厚意により、メーリングリストを使った、家づくりのプロジェクトに参加する機会に恵まれました。ここではその経験を通して、私が現在感じている、メーリングリストについて、書き留めてみます。
まず、メーリングリストを使った、新しいコミュニケーションの可能性とは、分断化、孤立化されてきた家づくりの過程に対して、関係者で情報を共有することが出来ると言うメリットがあるのです。
関係者で情報を共有するとは、どういった意義があるかといいますと、以下の点があげられます。
簡単に言えば、工業化社会は、工場生産の度合を進めています。ですから、家づくりに関わる、クライアントだけでなく、現場の職人や設計者さえも、家づくりの過程の全体像が把握出来ないのが現実です。つまり家をつくるというプロセスがあまり良く見えないのです。情報が分断さえているということです。
これらは、商品化が進んだと言われることと深く関係していると感じています。つまり、家は、”つくるもの”ではなく、”買うもの”であるという現実感覚が、つくるプロセスを見たり、参加したりということから遠ざけられているのだと思います。これも住まいを貧困にさせている一つの原因になっているのだと感じています。

実際の経験を通して感じているのですが、設計や工事の過程で、施主、設計者、協力専門家、そして工務店がメーリングリストで、情報を共有化することで、関係者が皆でコンセンサスを得ながら設計や工事を進めることが出来るのです。こういったことで、以前にはなかなか実現できなかった、構造設計者や設備設計者などと直接、クライアントがコミュニケーションを重ねながら、設計を進めることが出来るようになりました。
これは、家づくりに新しい、連帯感や共有感覚をもたらせてくれます。こういったことで、クライアントをはじめ、家づくりに関わる各自が自分のものであると実感することを実現してくれるのです。主観が変化すると言って良いかもしれません。
一方、あまりに細かく、細分化されたコミュニケーションを行うことで、情報交換に労力を使いすぎて、疲れてしまったり、現場段階で現場とのギャップが埋められずに、混乱することも経験しています。
情報交換で疲れてしまうのは、特に設計段階に起こりやすいと感じています。設計段階では、様々な家づくりの情報を、インターネットや雑誌で集めすぎたりして整理できない状態に陥り、みんなで疲れてしまうこともあります。私はこの現象は、行きすぎると一種の情報病ではないかと思う状況を作り出してしましいます。
また工事段階では、”もの”をつくると言う現場が、人間の手作業でありが、技能的、経験的、芸術的側面があるので、スピディーな情報交換とは、相容れない点になるのかもしれません。つまり、メールという”言葉”だけでは、表現できない現場の重みがあるのだと思います。
要するに、情報交換の量は、必ずしも家づくりの現場を活性化するとは限らないのだと思います。今後有意義な家づくりを行うには、建築家は情報交換という行為を、意識的に家づくりの状況に合わせてコントロールしていく必要があると感じています。情報化時代の建築家の主な仕事は、デザイン技術であるとともに、情報コントロール技術が必要であると感じています。 (00/08/05)
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