24,現場表現におけるコツと、私的デジカメ活用法

1,なぜ現場を表現するか
まずはじめに、なぜWEB上に工事のプロセス、特に現場を表現するかを考えてみたい。
自分のホームページに、”モノ”としての完成した住宅写真だけでなく、その住宅が完成するまでの”プロセス”を表現するようになってから数年経つ。
出来上がった”モノ”としての建物だけではなく、出来上がるまでの”プロセス”も重要な建築的な要素であり、両者を含めた総体が、広義の住宅(または建築)であると考えた方が自然であると思う。
いわゆる住宅の商品化が進んで、ハウスメーカーなどの商品が充実してくると、商品という出来上がった”モノ”が住宅としての評価の全てという意識が強くなってきていると思う。そして出来上がった”モノ”だけを重視する傾向は、メディアも同様であり、もう一つの側面であるモノが出来上がるまでのプロセスは、ほとんど話題にもならなかった。
例えば、食にたとえると、分かりやすいかも知れない。現代では外食産業があふれており、お金を出しさえすれば、どんな食でも簡単に口に入る。その場合、食が作られるまでのプロセスはほとんど見えないことが多い。しかし、一方食とは文化であり、人の基本的な営みである。プリミティブに考えると食を口にするためには、素材選びから始まり、調理、盛りつけに至るまでの一連のプロセスが必要で、この行為全体が、”食”という営みであると考えられる。ただし外食も現代における一つの文化の姿であるので、どちらが良いという評価は必ずしも出来ないが、少なくとも後者のありかたも、大切であることは言うまでもない。
ところが近年は住宅専門誌などにおいても、”プロセス”と名がついた特集を時々目にするようになった。ようやく住宅や建築にも、プロセスを大切にする視点が芽生えたきたように思われる。
そして、このような状況の中で、ホームページという自前のメディアは、建築のプロセスを表現することに対して非常に適しているメディアであると感じている。
2,現場の表現にテーマ性を持つ
プロセスの表現とは、本来、設計から建築工事、そして入居後の様子など時間軸に沿って連続的に続き、多様な表情を持つものである。
しかし何と言ってもプロセスの中心は、いろんな職人が交差し、ものつくりの場である現場だと思う。ここでは特にその現場に焦点を絞り、ホームページで、目を引く現場表現のためのノウハウ紹介する。
さて近年では、現場の様子などを、ホームページ上に公開している設計事務所が増えてきた。しかし、多くの場合、漠然と工事を紹介しているものが多いように見受けられる。以前には設計者が、建設プロセスをホームページに取り上げるだけで、目新しく興味を引かれたものであるが、最近は情報が氾濫しており、その表現方法に特徴がないと目に止まりにくいと思う。
しかし設計者の視線から、現場をじっくり見つめると、そこには多様で奥深い世界が広がっていると思う。だから、現場を表現するための基本は、自分でしっかりしたテーマを見つけ出し、それに沿って意図的に表現することが必要である。
例えば、ホームページ上でこれまで私自身が試みた、現場を表現するためのテーマは以下のようなものがある。
・ある職人をクローズアップし、どんな人柄で、何を考えながらつくっているかを表現する。
・現場に関わった職人全てを、紹介する。
・職人に、インタービューして実際の声を、聞いてみる。
・現場にある珍しい道具や変わった材料を紹介する。
・ものをつくる現場の活気とともに、ホットな臨場感を伝える。
その他、現場には話題が豊富にあるので、様々な角度の切り口が考えられると思う。
ともかく、必要なことは、設計と同じように、テーマを設定し、何を伝えるか、なぜ伝えるかを意識的になることである。
3,私的デジカメ活用法
さて、ここではWEB上で現場を視角的に表現するために欠かせない、デジカメの活用方法について述べてみたい。ただし私はプロのカメラマンではないので、あくまでも私的活用方法として紹介する。
1,ズーム機能を活用する。
標準レンズで、漠然と撮影された現場の画像は、全体像を表現するには適しているが、その一方焦点がぼけるので漠然としたものになりがちである。
視線の先を意識的にクローズアップすることことで、表現に変化が現れる。例えば、職人の仕事中の表情や、ズームアップして撮影することで写真の楽しさが出てくる。最近のデジカメには、ズーム機能は、多くのカメラに標準で付いているので、利用しない手はない。
2,連写機能を活用する。
現場で、職人の動きや、人の表情を撮影するときには、連写機能が有効である。連写とは、シャッターを押している間に、連続的にシャッターが複数回切られるものである。
例えば職人の手の動きや、顔の表情の変化は早いので、ベストショットを得るには連写機能は大変有効である。例えば、先日鉄骨の溶接現場の記録で、連写機能が活躍した。溶接作業から出る火花は、変化が早く、不定形なので連写機能を活用して、複数の中からベストショットを選んだ。
3,付属の動画機能を活かす。
数年前から試みているのだが、動画機能を使って現場を記録してる。と言っても、本格的なDV(デジタルビデオ)を使って、撮影するわけではなく、普通のデジタルカメラなら付属の機能としてついている動画を使って現場を撮っている。
目的は、現場の音や動きの臨場感を伝えることであり、空間を精密に美しく撮影することではない。空間を立体的にうまく伝えるには、高画質である必要があり、いくらブロードバンドになったとはいえ、データー量が膨大になってしまい、インターネット経由では、きれいに再生することは難しい。また美しく撮るためのビデオカメラワーク技術も持ち合わせていない。
従って私としては、現場の音や動きが伝わり、現場らしさが少しでも伝われば良いと思いながら使っている。例えば、土工事でユンボを使って土を掘っているところや、建て方でクレーが資材を運んだりする様子を、動画を使って記録することで、手軽に面白い表現効果が可能である。
また、私は現場の職人に、生な声をきくためのインタビューに活用してる。少しでも職人の生の声が残せたらという目的で活用している。
撮影したデーターを、HPにアップするためには、データー容量を落とす必要があり、変換技術(エンコード)が必要になる。
現在は、私はニコンのCOOL-PIXCEL5400を使っている。このカメラでは、.movというビデオ形式(=mac系)で保存されので、初めにmac系であるQUICK TIMEで取り込み、.aviというwindows系の形式に変換する必要があり、このデーターを、windowsで標準に付属しているムビーメーカーというソフトで、編集、圧縮してHP用として使う。
WEB上の現場表現は、現在私自身も試行錯誤の繰り返しである。しかし、現場を表現することは、建築表現に厚みをつけることになると思う。
これまでクライアントの話を聞いてみると、プロセスの表現が設計依頼のきっかけになっていたり、結局最終的には家づくりの記念になっているようある。
しかし、このジャンルは歴史が浅くまだまだ新しい表現の可能性を秘めていると思う。

(03/12/19)建築知識2003/12月号掲載
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