04-SHさんのこと



設計が始まる直前に、SHさんからいただいたメールが印象的でした。
それは、経歴とともに、自身の性格や志向性のようなものを紹介していただいたものでした。

ここにその一部を紹介いたします。



SHさんらいただいたメールから(2003/04/09)

こんばんは、大戸さん。

さて先日のお話で、断片的なものでも要望書のようなものが
あったほうがよいとのことでしたので
箇条書きのようなものですが送信いたします。
乱文で失礼いたします。


「2003年4月 新しい家への要望」

キッチンで楽しく料理できる
年をとっても暮らしやすい
家族3人の個(private)の部分もある生活
音楽のある暮らし アップライトピアノを買ってリビングにおきたい

休日にごろんと寝そべって空の雲を眺められる
少しでも緑がみえる
小さな木があるとよい(シンボルツリー)


「ライフスタイル」

家ではあまり仕事をしない
休日は遠出は少ない
来客はあまり多くない
泊まる客は両親くらい
子供の宿題などは小学校卒業まではリビングで
朝食はしっかり食べます
夜は娘の食事、風呂、添い寝ですぐ時間がたってしまいます。
添い寝でそのまま自分も朝まで寝てしまうこともままあります。
TVはあまりみません。
普段は収納に格納されてテレビが見えないのが理想的です。


以前は夫婦で花見と温泉によくいきました。
好みの花は福寿草、キクザキイチゲなどの野の花です。
バラやボタンが嫌いなわけではありませんが、派手な花よりも地べたにそっと
咲いている、しかしちゃんと主張しているような花が好きです。

-----中略----

今回、自分たちの家を建てようと思い立ったときに家を買った周りの先輩や同僚にきいても
マンションか建て売りの方がほとんどでした。自分は最初から漠然と建築士さんに設計しても
らって建てると考えていたのですが、土地探しや銀行ローンの交渉を経験して初めて先輩たち
の選択の理由も納得しました。

文章が変になってきましたが、「多少面倒でも自分が良しとする方向を選びたい」という私の
考え方を理解していただければと思い略歴まで書いてしまいました。
土地探しの段階でだけでも、かなり大変でしたが本来の目的である家の設計や工事は
もっと大変かもしれませんが、途中過程が一番わくわくすると思いますのでよろしくお願いいたします。

長文、失礼いたしました。

shさん愛用の書棚



以上のいただいたメールから、SHさんの飾り気のない率直さを感じ取ることが出来ました。

施主が家を建てると言うことは、いろいろ大変なことがありますが、敢えてその大変さを、ご自身が体験しながら、経験として、歩いていこうとなされる、SHさんの姿勢が伝わってきました。

また、SHさんは、派手な、自己主張するデザインを求めているわけではなく、しっかり地に着いた住宅を望んでおられると同時に、そのプロセスを、一つ一つご自分で確かめながら、歩を進めていくことを求めていることが、伝わってきました。


実際、SHさんのように、住宅という『モノ』とともに、その出来上がるまでのプロセスに積極的に、関わっていきたいと思うクライアントが増えているのはまぎれもない事実です。住宅を購入するといった事態、つまり商品化という傾向に対する反動なのかもしれません。

しかし、やはり住宅を商品と考えてる傾向は、多数派だと思われ、建築家とともに、家づくりをしようというクライアントは少数派だということには、変わりません。


一方奥さんは、北関東の田園地帯の出身であり、基本にある住宅のイメージは、田舎の日本家屋であるようです。みんなだれもが自分の育ったすまいが、原型であるので、今回のような都市中心部で、どのような割り切りや、こだわりをバランスさせるかが解決されるべき大きな問題だと思っています。

実家

実家



さて、いよいよ具体的な設計が始まります。